2010年8月31日火曜日

第七話:感想

いつもとは違った展開だったが、テンポもよく悪くない出来だったと思う。

ゲストの忍成修吾の快楽殺人者としての狂気、尾野真千子の愚かにすら映る遺族の怒り、飯田基祐の二重人格ぶり、どれをとっても迫力・空気感とも素晴らしかった。
山中崇、水野智則も、忍成・尾野・飯田らに比べると「演技をしてる感」があったが、全体のバランスとしては悪くなかった。遠藤要もああいう役をやらせると本当に上手い。

りょうも「私そんなに強くないんだけどな」というセリフのあと、伊達に背中を向けて歩き出すときの表情が実に素晴らしく、冴子という女性と伊達との関係を見事に表現していた。りょうの本領発揮だ。
演出も役者の演技をしっかり見せてくれる上に、それをクドくなく活かすリズムとグルーヴ感があって、このドラマによく合っていた。

脚本は前回同様にやや帳尻合わせな説明セリフが目についた。
これまでの久遠を考えると「法の裁きに関係なく人を殺すなんて許せねえ」と憤るのはあまりにも唐突で無理があるし、久遠部屋で語ったあすかの思いも長セリフで一挙に片付けてしまうのは見せ方として稚拙だ。久遠の「俺はあんたに救われた」も座りの悪いセリフだった。

これは脚本のト書きではなく演出のせいかもしれないが、闇の制裁のシーンでの伊達が余裕がなさすぎるのにも違和感があった。
日向の言葉も美代子の言葉も伊達にとっては迫るものがある言葉だろうが、闇の制裁人という仕事をしてきた中で、考えて来なかった言葉という訳ではないだろう。むしろ幾度となく自分に問いかけ続けてきた言葉なのではないだろうか。
今回、それでいきなり伊達から余裕が奪われてしまうには、きっかけが弱すぎる。
であれば、これまで堺がポーカーフェイスの下の伊達の感情を丁寧に演じてきたように、今回もあくまでポーカーフェイスの下で大きく揺れる感情を演じさせたほうが伊達らしくて良かっただろう。

そうでなければ、前回の久遠の件が伊達の心に変化をもたらせたとして、久遠と伊達のシーンを追加し、伊達の感情を描くという手もあった。
伊達は、文弥を殺された怒りで我を失っている久遠に、「憶測で人を裁けばそれはただの犯罪者だ。君が憎んできた奴らと何も変わらない」「法で裁ける人間は法で償わせるんだ。俺達がやってるのは復讐じゃない」と窘めた。
しかし伊達自身は自分がしていることに迷いはなかったのだろうか?

偉そうに久遠に言ったものの自分はどうだ?犯罪者と同じじゃないのか?復讐じゃないと言ったが、じゃあ復讐とどこが違うんだ?と、伊達は内心自問自答していたとする。
一方その隣では、久遠が伊達の言葉をまっすぐ受け止めて、俺達がしてることは犯罪者とは違うんだ、文弥の父親を殺したいと思った俺は間違ってたんだ、と少しづつ自分の中で消化し始めている。
伊達は闇の仕事で久遠が何かを見失ってしまわないよう見守ろうとしている。なのにその自分が迷っている…。そのことがきっかけとなって、日向や美代子の言葉に大きく揺れてしまった、というのであれば話はわかりやすかった。


伊達のしていることと、日向のしていることだが、基本的には変わらない。

伊達は第三話で久遠に「法で裁けない者を裁く。もちろん決して許されることじゃない」と言っている。また日向は今回「立件出来ない容疑者を始末する。間違いなく犯罪者です」と言っている。
もちろんその通りである。

真面目に解説すると、日本は多くの欧米諸国同様に「自由民主主義国家」な訳で、ざっくり言ってしまうと、日本国民は「公共の福祉に反していない限り、どう生きるかという個人の自由は最大限尊重される」ということと、「国民全てが等しく主権者であり、国の政治は国民が行う」ということが憲法によって保障されている。

で、日本ではこの「自由民主主義国家」であることを根拠に、「罪刑法定主義」という形をとっている。
「罪刑法定主義」というのは、「”刑法上”何が犯罪」で「どんなときにどんな刑罰が科せられるのか」については、あらかじめ法律で定めておかなければならない、という考え方だ。

何が犯罪でどんなときにどんな刑罰を受けるのかを、誰かが好き勝手に決めてたら、とてもじゃないけど自由になんて生きられない。
日本の主権者は国民なんだから、国民の代表機関である国会を通じてちゃんと法律にしときましょうや、ということである。

現代日本では、その法律に則って「無罪」か「有罪」か「有罪ならどのような罪でどれくらいの刑罰か」を判断出来る(裁判権を持つ)のは、「国家」のみだ。話題の裁判員制度も「国家の裁判権の行使」に参加する制度とされている。

裁判で決まった刑罰を科すことが出来る(刑罰権を持つ)のも「国家」のみ。
国家によって刑罰権の行使を委ねられた刑務官など以外は、例え遺族であっても刑罰の執行は認められていない。

武士階級の仇討ち法があった江戸時代と違って、現代の刑罰は「復讐」ではない。
他人の「法益」(生命、身体、自由、名誉、財産、平穏、など)を奪った罪に対して、その罪の重さに応じた「法益」を、「償い」として「国家」が奪うことが刑罰であり、刑罰には「再犯予防」や「犯罪の抑止」という目的もある。

当然のことながら、伊達や日向のように裁判権も刑罰権もない人間が、何人もの人間を自分勝手に制裁するなんてのは、とんでもない重罪にあたる。
殺していようが殺さずに死ぬまで監禁だろうが、法を無視して残酷な私刑を繰り返していることに何ら変わりはない。もはやそれは「刑罰」でも「復讐」ですらない。
そのことを理解しているからこそ、伊達は日向の煽りに理路整然と言い返すことが出来なかった。

闇の制裁人という許されざる行為をしている伊達だが、しかし彼は真っ当な感覚を失ってはいない。

「たとえ法で裁けなくても真実を明らかにすることが俺達の仕事」と教えてくれた井筒に憧れ、刑事としての己の感覚を信じて粘り強く捜査を続け、凶悪犯人に対してもその中に残っているかもしれない良心に期待して自首を望む。
必死で助けを求める久遠を救ってやりたい一心で仲間にしたものの、こんな許されざる行為に久遠を巻き込んでしまったことに後悔もしている。

むしろ感覚が狂っているのは三上だ。

妻と10歳の息子を殺された三上は、両親を殺され犯人を刺してしまった10歳の伊達に、亡き息子への愛情のはけ口を見つけた。
状況から考えても幼い伊達に重い罰が科せられる可能性は殆どなかった。きちんと罪を明らかにして判決を受ければ、伊達も人を刺してしまったという罪の意識を自分なりに消化することも出来ただろう。
しかし三上は、どのような手を使ったのか、伊達の罪自体をないものにしてしまった。

伊達は両親を殺した灘木を「憎しみ」から「殺すつもりで」刺した。
結果的に灘木は一命を取り留めたが、確かに伊達は灘木に強い殺意を抱いていたのである。両親を助けたい一心で正当防衛として灘木を刺したのではない。
灘木の言った「正義なんて通用しない。悪を倒したかったら悪になるしかない」という呪詛の言葉通りに、伊達は灘木を殺そうとしたのだ。

伊達がもう少し愚かで、自分が灘木を刺した意味に気づかなければ、伊達は三上が望んだように自分の罪を忘れてしまうことが出来たかもしれない。
しかし「自分は普通じゃない」と苦しんでしまう伊達にとっては、きちんと罰を受けることこそが救いであった筈だ。
そんな伊達が、心に深い葛藤を抱えたまま、少しでも前を向いて生きようと決めたのは、たとえ間違っていても自分への愛情を惜しまない三上のためだったのではないだろうか。

伊達が三上に心から感謝をしていることに疑う余地はない。
本心を隠した表情の下には、冷静に三上を見ている目も、三上を実の父親のように深く愛する気持ちもあるだろう。そして恐らく後者のほうが強い。
闇の制裁人になった経緯に三上がどのように関わっているかはわからない。
しかし三上がそれを正義と信じ真剣に伊達の助けを必要としていたら、それが必ずしも正義であると割り切れなくても、それが三上の中に巣食う悲しみに由来するものなら、伊達は三上のそばで三上が暴走しないように見守る道を選ぶだろう。

一方で伊達は久遠に対しては、過去の痛みを正しく乗り越えて欲しいと思っている。
理解して手を差し伸べてくれる大人が必要なら、伊達は久遠のそばで望むだけその役を負ってくれるだろう。家族の愛情を知らない久遠のためなら父にも兄にもなるだろう。
しかし伊達は自分の間違った愛情で久遠の成長を歪めたりはしない。
久遠の進む道を良かれという思いで勝手に決めることはない。辛くても苦しくても自分自身で正しい答えを掴んで欲しいと思っている。

第六話で久遠が文弥に自分を投影して冷静さを失っていたとき、伊達は久遠に冷静で客観的な目を取り戻すよう導いていた。その一方で文弥を助けたい久遠の気持ちを汲んで、文弥と久遠が救われるために単独で捜査にも当たった。
久遠の苦しみの深さを知る伊達にとって、文弥を殺された久遠の慟哭には心を揺さぶられただろう。久遠の無念をどうにかして果たしてやりたい気持ちだってあったに違いない。

しかし伊達は、かつて三上が自分の罪を揉み消してしまったような間違った愛情を、久遠に押し付けたりはしなかった。
久遠の心が怒りに雁字搦めにならないよう第三者の視点と正論を与えながら、久遠が自分の手で自分自身の答えを掴みとることを見守る道を選んだ。
そして出来れば憎しみや悲しみからでなく、暖かい思い出を支えに前を向いて欲しいと願っていた。
伊達は自分の感情に流されることなく大人として責任を持って久遠を導こうとしている。
それは三上が伊達にかけた愛情とはある意味対照的なものかもしれない。

伊達は三上の「おまえは悪くない。おまえが刺してなければ灘木は逃げ延びて誰かを殺してた。おまえは正義のために戦っただけだ」「俺達は楽しんでやってるワケじゃねえ、むしろ逆だ。それでもやっているのは…遺族の明日を祈ってるからだ」という言葉に何を感じただろう?
灘木は確かに人間のクズだったが、将来また人を殺すに決まってるから今殺したって正義という理屈は成り立たない。どんなに遺族の明日を願っていようが、辛い思いを感じているから許されて、快楽を感じているから許されない、というような話でもない。

伊達は三上よりもはるかにありのままを理解していた。だからこそ伊達は限界だったのかもしれない。闇の制裁を辛く感じていることを一目で久遠に見抜かれてしまうほど、伊達は疲れ切っていた。
「俺は伊達さんに救われた」という久遠の不器用な励ましが、今度は伊達を救うのだろうか。それとも自ら乗り越えていくのだろうか。第八話以降に期待だ。


さて、そろそろ佳境に入ってきた夏樹殺しの犯人探しとジョーカーの黒幕だが、ここで予想を立ててみようと思う。

まず、冴子が疑っているように、神隠しには警察内部が関わっている。
それが「当たり」であることは井筒が冴子を遠ざけようとする態度でも明らかだ。
そしてその警察内部の権力は、凶悪犯を無期禁錮刑に処せるだけの資金を持ち、首を突っ込んでくる人間を殺してしまうほどの凶暴性を持っている。

夏樹を殺したのも三上の言うように警察内部の犯行だろう。
伊達が違和感を感じるほど、警察中で井筒を犯人に仕立て上げようとする動きがあったなら、井筒は夏樹殺しの犯人ではなく、犯人に疎まれている人間と考えるのが自然だ。

おそらく井筒はその警察内部の秘密を知ってしまった人間だろう。
上手く牙を隠すことで自分は危険から逃れられたが、同じく何かを知ってしまった夏樹を守ることは出来なかった。
夏樹の携帯電話を持ち去ったのも、他の誰かが不用意に首を突っ込んで消されてしまうことがないように、それに関わる情報を削除したのだとも想像できる。

今回井筒は冴子に「夏樹を殺したのは俺だ」と告白したが、それも、そうでも言わなければ冴子が更に深入りしていくことは目に見えていたからだろう。それは冴子に命の危険が及ぶことに繋がる。
伊達への忠告も功を奏しなかった以上、冴子を守りたければ、井筒は「自分がやった」と言う以外にはなかっただろう。

一方、三上は伊達同様に「神隠しの実行犯の一人」として警察内部権力に繋がっている人間だ。

伊達が黒幕である警察内部権力についてどの程度把握しているのかはわからないが、もしこの警察内部組織が夏樹を殺した警察内部の人間と同一であるのなら、伊達は夏樹を殺した犯人の仲間ということになる。
井筒は、文弥の事件の際に久遠を泳がせたことで、現在、三上・伊達・久遠の3人が神隠しの実行犯であることを掴んだだろう。
自分のアリバイ資料を署で渡さずに、わざわざ「バーMikami」にまで持ってきたのは、三上に対する何らかの牽制と思われる。

今のところ黒幕である警察内部権力側のキャラクターは登場していない。
伏線として上っているのは、井筒が第一話で「殺してやりたい人間」として挙げた「刑事部長」くらいなのものだ。
おそらくはこの刑事部長が新キャラクターとしてこれから登場してくるのだろう。
10歳の伊達の罪をもみ消すために三上に協力したのも、もしかするとこの刑事部長かもしれない。

夏樹殺しと神隠し。この過去軸に関係するのは、井筒、あすか、冴子、三上、伊達。
ドラマのキーパーソンの一人である久遠の過去にはこれら2つとの接点がない。
4歳から虐待を受け続け、10歳で捨てられ、以降の生い立ちは不明な久遠が、夏樹殺害や神隠し発生の過去と何らか繋がっていくのか、それにも興味がある。

もし刑事部長が登場するとしたら、久遠と関係があるかもしれない。
久遠の父が息子の年齢の割には年齢を取っていることから、本当の父親ではないという可能性もある。背中の火傷はタバコの火によるものだけがあの父親が行ったもので、大きな火傷痕はもっと子供の頃に火事か何かで負ったものである可能性もある。
エンディングの久遠の背中に被る「一家惨殺」の新聞記事は、もしかすると刑事部長の家族の話で、赤ん坊だった久遠は幸い生き残り、証拠隠滅のための放火によって火傷は負ったものの、密かに助けられて久遠家で育てられていたという展開もあるかもしれない。

ドラマもいよいよ残すところ数回、息切れせず最後まで突っ走って、我々視聴者を楽しませて欲しい。


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フジテレビ・オン・デマンドジョーカー許されざる捜査官
一話315円、全話1575円

2010年8月27日金曜日

第七話:伏線?セリフ集

(Bar Mikamiにて)

井筒「5年前、宮城夏樹が殺害されたとき、俺は容疑者の一人だった。アリバイがなかったからな。でもそれをおまえは偽装してくれた。でもあれは俺をかばうためじゃなかったんだよな。…俺を泳がせるためだったんだよ。なあ?」

(三上、驚いた表情で伊達を見る)

井筒「当時俺が何を追っていたのか、それに夏樹がどう関わっていたのか、俺がパクられたら判らねえもんなあ?」

(三上、不満気。井筒、伊達に一枚の紙を渡す)

伊達「何ですか?」

井筒「俺のアリバイの詳細。5年前のコンビニ強盗殺人事件、俺とお前がいつどこを捜査したか詳しく記しといた。片桐に渡しといて」

三上「そんな捏造、許される訳ねえだろ」

井筒「バーのマスターに言われる筋合いのことじゃねえよ」

三上「おまえ、定年前に俺が警察辞めたこと、根に持ってんのか?」

井筒「そんなに心の狭い男じゃないよ、俺は。…ただ今更パクられたくないだけだよ」

三上「アリバイが崩れたら一巻の終わりじゃねえか」

井筒「ふふん、3年ぶりに話せてよかったよ。ごちそうさん」

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(久遠部屋。神隠し模倣犯によって殺害された詐欺師の記事を前に)

久遠「どういうことだよ!俺たちと同じことをやってる連中が他にもいるなんてよ!」

伊達「オレオレ詐欺の怨恨の線もありえる」

久遠「遺体には”悪人に制裁を”ってメッセージが貼ってあったんでしょ?普通に考えて模倣犯の可能性のほうが高いっしょ」

伊達「神隠しは警察の中だけで噂されてることだ。世間には広まっていない。つまり、もし模倣犯だとすれば、それは警察関係者の犯行ってことになる。とにかく様子を見るしかない」

久遠「そんなこと言ってる場合かよ。こんかいのオレオレ詐欺の容疑者だってもう少しでパクれたんでしょ?…法の裁きに関係なく人を殺すなんて許せねえ。とにかくこの模倣犯を早く捕まえないと俺達にまで害が及ぶ。もし正体がバレたら…」

(あすかがノックもしないで駆けこんでくる。何事もないふうを装う伊達と久遠)

あすか「伊達さん。事件です」

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(あすかが運転する車から降り、吐きそうになっている伊達)

久遠「ほら、行くよ」

あすか「またですかぁ?」

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(来栖・堀田・轟・溝口・武本、根津健太の遺体を前に現場検証中)

久遠「(堀田をどけて)死因は?」

溝口「死因はじゃねえよ、今頃来やがって!」

(久遠、肩を竦めて愛想笑い)

堀田「(久遠の腕を引っ張って)ふふ、じゃねえよ」

(久遠と堀田、睨み合う)

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(捜査一課前の廊下に冴子が立っている)

冴子「よっ!」

伊達「おぅ!…じゃないよ。こんなに自由に署内を行き来できるルポライターは君ぐらいのもんだよ」

冴子「そぉんな褒めないでよ」

(伊達、冴子の行く手を阻むようにロッカーに手を付く)

伊達「…褒めてないよ。元警官の特権を利用しすぎ。わるいけど…」

冴子「夏樹の事件!…嘘ついたでしょ。来栖だっけ?あなたの部下。彼の話じゃ井筒課長にアリバイはなかったって。…どういうこと?」

伊達「そうだ、そうだ、そういえば」

(伊達、カバンをひらいて井筒から渡された報告書を取り出す)

伊達「これ、井筒課長から」

冴子「当時の捜査資料か。…随分用意がいいねえ」

伊達「暑っつい、暑っつい(部屋に入っていく)」

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(伊達と日向、根津美代子の自宅で聞き込み)

日向「義弟さんの犯行だとしても許せませんか?」

美代子「……はい」

日向「殺してやりたいですか?」

伊達「(咎めるように)日向くん」

美代子「…殺したいですよ。あの人を失った悲しみは、それぐらい深いんです」

(美代子の自宅を出て)

伊達「どうしてあんなことを言ったのかな。警察官としてあまり誉められた言動じゃない」

日向「ならあなたは許せますか?大切な人が殺されたら。神隠しって御存知ですか?立件出来ない容疑者を始末する。間違いなく犯罪者です。でも被害者からしたら救世主だ」

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(マーベスト・コーポレーション。ガラスパーティションの会議室にあすかと吉住)

あすか「大丈夫かなあ、伊達さん」

吉住「伊達警部って日向と組んでる方ですよね」

あすか「え、はい」

吉住「日向は相当な切れ者ですよ。まあ協調性ゼロなんで周囲には嫌われてますけどね」

あすか「似てます!頭は切れるけど周りのこと全然考えてないっていうか」

吉住「そうそうそうそう!」

あすか「ホントに手がかかるんですよねー」

(あすか、視線を移すと、コピー機で自分の顔をとっている伊達の姿が。思わず飲んでいたアイスコーヒーを吹いてしまう)

あすか「伊達さん、何やってんですかっ。伊達さんは被害者周辺のカンドリでしょ、関取りっ!」

***********************************************************

伊達「なあんか引っかかるんだよなあ」

あすか「またですか」

伊達「毎晩電話で話してたんだよ?どうしてFAX送らなきゃいけないんだ」

あすか「そりゃ実際に怪文書を見せて精神的に追い込みたかったんじゃないですか?」

伊達「そうかもしれない、でも」

伊達・あすか「そうじゃないかもしれない」

あすか「まだ疑問があるなら、ドウゾ」

伊達「お金が目的だったのに抜き取られたのは現金のみでカード類は無事だった」

あすか「動揺してたんじゃないですか?…まあそうじゃないのかもしれませんけど」

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日向「どうして任意で引っ張んなかったんです?自首をするための猶予を与えたんですか?」

伊達「………」

日向「ぬるいですね」

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冴子「珍しいですね。課長から会おうなんて」

井筒「5年前のコンビニ強盗殺人事件の資料。伊達からもらった?」

冴子「ええ。でもここに書かれた聞き込み先の漫画喫茶、5年前にはまだオープンしてませんよ」

井筒「…あ、そお」

冴子「いい加減教えてくださいよ。本当のことを」

井筒「……。夏樹の事件から手を引け」

冴子「………」

井筒「おまえも俺の可愛い部下だった。まあ口は悪かったけどね。これ以上追えば身の安全の保証は出来なくなるぞ」

冴子「どういう事ですか!夏樹の事件には何が隠されているんですか…。課長!」

井筒「…あいつは、俺が殺した」

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(江原の遺体を前に)

日向「手間が省けましたね」

久遠「おい!」

(伊達が久遠を制し、日向のそばに歩いていく)

伊達「彼は捕まえられた」

日向「でも江原には前科がありません。捕まえたとしても極刑にはならなかったでしょう。そのことを考えるとこっちのほうが遺族も喜ぶ…」

伊達「そういう問題じゃない」

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(久遠部屋)

あすか「やっぱり神隠しなんでしょうか?」

久遠「違うんじゃん?」

あすか「でもやってることは一緒ですよね」

久遠「いや、だから…」

あすか「もし、私の兄を殺した犯人がこのまま捕まえられなかったら、って考えることが時々あります。私の大事な家族の命を奪っておいて今もどこかでのうのうと生きてる…考えただけで気がおかしくなりそうです。正直、同じ目に合わせたいとも思います。でも、もし本当に殺されたとしたら…私は手放しで喜べないと思います。きっと後ろめたさや罪悪感で一杯になる」

久遠「…殺してなかったとしたら?」

あすか「…え?」

(あすかの携帯が鳴る。掛けてきたのは冴子。退室するあすか)

久遠「…ごめん」

伊達「江原さんを殺した犯人だけれども」

久遠「日向でしょ?俺達以外に江原が真犯人だって知ってるのはあいつしかいない。模倣犯は日向だ」

伊達「だけど彼にはアリバイがある。昨日の午後8時と午後10時、根津さんのマンションのエントランスに日向の姿が写ってた。奥さんの証言も取れてる」

久遠「夜8時から10時まで根津さんちにいたってわけか」

伊達「犯行時刻は午後8時40分」

久遠「でも非常口から出入りすれば犯行は可能だよ?」

伊達「そうなると奥さんの証言が嘘ということになる」

久遠「彼女もグルって可能性は?」

伊達「何ともいえない。これからそれを聞きに行く」

久遠「…ねえ。もし日向のアリバイが崩れたらどうすんの?」

伊達「…もちろん法で裁く。それが俺達のやりかただ」

***********************************************************

冴子「井筒課長がもう事件を追うなって」

(あすか、冴子を見つめる)

冴子「でもここで引くわけにはいかない」

あすか「冴子さん…」

冴子「夏樹の事件の背後にはそれだけ大きな秘密が隠されてるってこと。神隠しに繋がるなにかが」

あすか「兄はその秘密を知ったから殺されたんですか?」

冴子「そうかもしれない。確か夏樹の捜査資料が一ページなかったって言ったよね?」

あすか「はい…そこになにか書いてあるかも…。井筒課長が持ってるってことは?」

冴子「可能性はある」

あすか「じゃ私探してみます」

冴子「ん」

あすか「あの…これって伊達さんには内緒の方がいいんですよね?」

冴子「そうだね。夏樹の事件に関わっている人間にはバラさないほうがいいと思う」

あすか「彩子さんは伊達さん疑ってるんですか?」

冴子「まさか。…と言いたいところだけど井筒課長のアリバイ作りに関与してたことを考えるとね」

(あすか、辛そうな冴子を見て)

あすか「彩子さん、まだ伊達さんのこと好きなんですか?」

冴子「ふっ、そんなわけないでしょ…」

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<4年前>

(コートを着て捜査一課から出てくる冴子。廊下で待っていた伊達)

伊達「よぅ…」

冴子「おぅ…」

伊達「辞表を提出したって本当?」

冴子「…うん。夏樹の事件を揉み消しちゃうような現実を知っちゃうとね。人を信じられなくなるの嫌だから」

(冴子、歩き出し、立ち止まる)

冴子「ね…引き止めてくんないんだね(カラ元気で振り返る)」

伊達「僕は君に振られたんだよ。そんな資格はないよ」

冴子「(少し寂しそうに)やっぱりカズは女心がわかってない。…私、そんなに強くないんだけどなぁ」

(冴子、無理に笑顔を浮かべて立ち去る)

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(江原が殺された夜、血まみれで美代子の家に押し入る日向)

日向「あなたが言ったんですよ。殺してやりたいって。だからあなたの代わりに殺してあげたんです」

(恐怖のあまりしゃがみ込む美代子)

日向「(笑いながら)あいつ泣きながら言ってましたよ。死ぬとは思わなかったって。調子いいよね」

(日向、だんだん興奮しはじめる)

日向「ムカついて弾丸なくなるまで撃ちこんでやりましたよ。死んでも何発も!何発も!」

(美代子、恐怖で声が出ない)

日向「奥さん、恨みは晴らしましたから僕のこと助けてくれますよね。心配しなくていいですよ。僕の言うことを聞いていれば絶対に捕まらない。…殺して欲しかったんでしょう?」

(美代子、怯えながら頷く)

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(美代子の家。日向は8時頃から10時頃まで日向はここにいたと言い張る美代子)

伊達「もしあなたが日向のアリバイ工作に加担しているならあなたも罪に問われるんです」

美代子「違うって言ってるじゃないですか!私と日向さんはここで2時間話をした、それでいいじゃないですか!どうして私を苦しめるんですか?私は何も知りません。お帰りください。お願いです、帰ってください!」

伊達「今朝、江原さんがご主人を殺害した証拠が手に入りました。江原さんは法で裁けたんです」

美代子「だから何だって言うんですか?あの人が帰ってこないことに変わりはありません。あの人は子供を欲しがってました。結婚する前からずっと。ずっと」

(美代子の脳裏に子供が出来たことを喜ぶ夫の姿が蘇る)

美代子「あの人はもうお腹の子の顔を見ることはありません。あんなに生まれてくることを楽しみにしてたのに、もう見れないんですよ?」

(美代子の目から涙が止めどなく流れ落ちる)

美代子「さっきのあなたの推測が真実なら、私は悪いことをしています。でも心のどこかで清々している自分がいるのも事実です。…私は何も知りません。お帰りください」

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(Bar Mikaki、日向の言葉や美代子の言葉を思い出している伊達)

三上「おまえさあ。まさか模倣犯と自分が同じだなんて考えてんじゃねえだろうな」

(視線をそらす伊達)

三上「俺達は楽しんでやってるワケじゃねえ、むしろ逆だ。それでもやっているのは…遺族の明日を祈ってるからだ」

伊達「…ごちそうさま」

(バーを出ると久遠が待っている。いつもの店でラーメンを食べる2人)

久遠「伊達さん」

伊達「ん?」

久遠「俺はあんたに救われた。…ごめん、こんな言葉しか思いつかない」

伊達「(ラーメンを差して)のびちゃうよ」

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(青葉の第九倉庫に江原の共犯を名乗る男を保護を求めて身を潜めているので保護するよう伊達に伝えてくれ、と久遠から言われた日向。一人倉庫に向う)

江原の共犯者を名乗る者「自首する!早く署に連れてってくれ!」

日向「おまえも根津健太の殺人に関与しているのか?」

江原の共犯者を名乗る者「殺したのは江原だ!俺はFAXを送ったり脅しただけだ!詳しい話は警察で話す!だからっ!」

日向「甘いんだよ」

(江原の共犯者を名乗る者のシルエットに向かって弾が切れるまで撃つ)

***********************************************************

伊達「おまえは人が撃てればそれでいいんだな!」

(伊達、日向に銃口を向けている)

日向「ハメられたって訳だ」

伊達「”悪人に制裁を”。容疑者を撃ってあのメッセージを残したのはおまえだな」

(ボイスチェンジャーを通した久遠の声が聞こえる)

久遠「模倣犯のくせに出しゃばった真似しやがって。おまえみたいなやつと一緒にされてると思うとヘドが出るよ」

日向「(伊達に向かって)あなたが…神隠しの正体?(少し嬉しそうに)なんだよ、仲間じゃないか」

(伊達、相変わらず無表情だがいつもの余裕は感じられない)

日向「僕とあなたは同じだ」

伊達「違う」

日向「違わないよ。遺族を助けるために法を無視して人を裁く…」

伊達「だまれ」

日向「そんな権利はないのに正義のように人を殺す」

伊達「おまえと一緒にするな!!」

(余裕なく声を荒げる伊達、不審に思う久遠)

日向「何をムキになってんだよ。別に悪いなんて言ってないじゃないか。クソみたいな悪人がいなくなって遺族が救われるんだよ」

(日向、銃口の先にまで歩み寄る)

日向「俺達は救世主だ」

伊達「違う。おまえはただ人を殺したいだけだ。おまえがやっているのはただのエゴだ」

日向「だったら!…あんたがやってることは正義なのかよ?」

(伊達の表情から余裕が消える)

日向「エゴじゃないって言い切れるか?(伊達の背後をちらりと見て)…答えが聞けなくて残念だよ」

(伊達の背後から黒装束の男が現れ、伊達を殴り倒す。倒れこむ伊達。拳銃に手を伸ばすが、男によって届かないところへ蹴り出される)

日向「遅かったね…兄さん」

(男、仮面を取る。現れたのは日向と同じ港北西署の吉住)

吉住「弟を傷つける奴は許さない」

(日向、吉住から拳銃を受け取り、銃口を伊達に向ける)

日向「救世主は一人でいい」

(久遠も頭を殴られて意識を失っている)

(銃声が響く。血しぶきが上がる)

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(誰もいない捜査一課。夏樹の捜査資料の失われた1ページを探して井筒の机を漁るあすか。ペン立てを倒した拍子に何かの鍵を見つける。手提げ金庫の鍵。開けてみるとハンコなどと一緒に一枚の紙が。開いてみると探していた捜査資料の1ページだった)

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フジテレビ・オン・デマンドジョーカー許されざる捜査官
一話315円、全話1575円

2010年8月25日水曜日

第七話:あらすじ

ある男が殺害され、遺体の上に「悪人に制裁を」と書かれたカードが残されていた。伊達一義(堺雅人)、久遠健志(錦戸亮)は、自分たちが行っている制裁行為を真似た模倣犯かもしれない、と思う。が、だとすると、制裁行為は一般に報道されていないため、警察の人間の犯行ということになる。

そんな折、根津健太(山中崇)という男性の遺体が発見された。根津は、後頭部を強打され死亡したが、現金が奪われていたため、宮城あすか(杏)は、通り魔の可能性を示唆する。一方の伊達は、根津のズボンのポケットの裏地が出ていることが気になる――と、同じタイミングで、ポケットから何かが抜き取られた形跡があると指摘する者がいた。伊達とコンビを組むことになった港北西署刑事課の日向光明(忍成修吾)だった。

翌日、伊達は日向と根津の妻・美代子(尾野真千子)から事情を聞く。美代子は、根津には仕事以外に悩みはなかったと証言。しかし、日向が食い下がると、根津の弟・忠士(遠藤要)が頻繁に金の無心をしてきていたことに頭を悩ませていたと明かす。そんな美代子に日向は、忠士が犯人なら殺してやりたいか、と尋ねる。警察官としてあるまじき質問に、伊達は日向をとがめるが、美代子は「殺してやりたい」と答える。

同じ頃、あすかは日向の同僚の刑事・吉住武徳(飯田基祐)と、健太の上司・江原(水野智則)を訪ねる。江原は、数日前、健太の留守に忠士が鉄パイプを持って会社に現れ、騒動になっていたことを明かす。

そんな折、根津の殺害現場付近で鉄パイプが見つかり、忠士が取り調べられることに。鉄パイプに忠士の指紋があったことが証拠となり、来栖淳之介(平山浩行)らは忠士を自白させようとするが、伊達は忠士の犯行ではないと言う。忠士には4日前に手のひらに負った大きな切り傷があったのだ。健太が殺害されたのは2日前だから、忠士が犯人ならば、鉄パイプの指紋にも傷跡があるはずだ。つまり、鉄パイプの指紋は、健太の殺害前、会社に乗り込んだときについたものだろう、と伊達は推測したのだ。

翌日、伊達は日向とともに江原を訪ね、健太を殺したのは江原だろうと切り出す。健太のパソコン内に、江原が行っていた不正を暴こうとしていたメールがあったのだ。健太は証拠のデータをUSBメモリに入れ携帯していたため、それを奪おうとした江原に殺されたのだろうと伊達は言う。さらに、健太の爪の間に、犯人のものと思われる皮膚が残っていたこと、現在、江原のDNAとの照合を行っていることを明かすと、また来ると言って席を立った。江原に自首する猶予を与えた伊達を、日向は「ぬるい」と揶揄する。

そんな頃、井筒将明(鹿賀丈史)は、片桐冴子(りょう)を呼びだすと、5年前に起こった宮城夏樹(丸山智己)殺害事件から手を引くように言う。これ以上追うと、冴子の身に危険が及ぶと警告する井筒に食い下がる冴子。すると井筒は、夏樹は自分が殺した、と衝撃の告白をした。

その日の夜、とある駐車場で、江原が銃殺され、遺体の上に「悪人に制裁を」と書かれたカードが残された。実は、犯行に及んでいたのは、日向だったのだ。現場に駆け付けた来栖らは、"神隠し"か、と気色ばむが、伊達と久遠は日向の仕業だと感づいていた。しかし、日向にはアリバイがあった。江原が殺害された時刻、日向は健太宅で美代子と話していたと言い、防犯カメラの映像と美代子の証言もそれを裏付けた。それでも久遠は、非常口から出入りすれば犯行に及べるし、美代子がグルである可能性も否定できない、と推測。伊達は、美代子に話を聞きに行く。

伊達の訪問を受けた美代子は、日向のアリバイを裏付ける証言を繰り返すだけだった。アリバイ工作に加担すれば、美代子自身も罪に問われるのだ、と言う伊達に、美代子は涙ながらに自分の証言を認めてくれればいいじゃないか、と訴える。美代子は、伊達の推測が真実なら自分はいけないことをしているが、それでも、心のどこかが清々しているのも事実だと心の内を吐露。伊達は、それ以上言葉を発することはできなかった。

その日の夜、三上国治(大杉漣)のバーに立ち寄った伊達は、自分たちが行っている制裁行為の是非について思いを巡らせていた。

翌日、久遠は日向を呼び止め、江原に共犯者がいたと明かす。そして、その男とコンタクトしたところ、保護を求めてきたため、伊達にその男がいる第九倉庫に行くように伝えてくれ、と頼む。

その後、倉庫にやってきたのは日向ひとりだった。暗い倉庫のなか、自首するから、警察署に連れて行ってくれ、と男の声がした。ところが、日向は保護するどころか男に向け、銃を撃ち続けた。と、人影が音を立てて倒れた――次の瞬間、電気が点いた。人影はマネキンで、後ろを振り向くと、日向に麻酔銃を向けて立つ伊達の姿が、その近くには久遠の姿もあった。

江原に共犯者がいたというのは、日向の正体を暴くため、伊達と久遠がうった芝居だったのだ。

伊達に対峙した日向は、伊達も自分も、遺族を助けるために法を無視して人を裁く同じ仲間だ、と言うが、伊達は「お前と一緒にするな」と声を荒げる。それでも、自分たちは救世主だ、と続ける日向に、お前は人を殺したいだけで、お前のやっていることはただのエゴだ、と伊達は反論。そんな伊達に日向は、それならば伊達のやっていることはエゴではなく正義なのか、と問う。伊達の心が一瞬揺れたのを、日向は見逃さなかった。と、次の瞬間、何者かが伊達を背後から殴打、伊達は倒れてしまう。すると、日向が「遅かったね。兄さん」とその男に声をかける。それは、吉住だった。吉住から銃を受け取った日向は、「救世主はひとりでいい」というと、伊達に銃口を向けた。

その頃、久遠は吉住に襲われ倒れていた――と、銃声が響き……。



(以上公式サイトhttp://www.fujitv.co.jp/JOKER/index.htmlより)


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フジテレビ・オン・デマンドジョーカー許されざる捜査官
一話315円、全話1575円

第七話:概要

放送日: 2010年8月24日
タイトル: 「CRIME7 模倣犯現る…間違った正義」
演出: 石川淳一


<ゲスト>

日向: 忍成修吾


根津美代子: 尾野真千子

吉住(日向の兄): 飯田基祐


根津健太: 山中崇

エハラ(根津の上司): 水野智則

根津の弟: 遠藤要


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第六話:感想

いつか来るだろうと思っていたストーリーだった。話数は想像していたより早かったが、伊達たちの仕事が何であるかを再定義するためには重要な回だった思う。視聴率も前回の出来を見てどうかと思っていたが上げてきた。固定ファンがしっかり付いているようだ。
ただ脚本はプロットをそのままセリフにしたような出来であまり良くない。この脚本家であればもう少しプロットを整理して、役者の演技を活かす緩急をつけたいいシーンとセリフを生み出せる筈だ。練って推敲するだけの時間が取れないのか脚本に疲れが見えるのが残念だ。

構成に関しても今回は盛り込むべき内容が多くあった。しかし尺は変わらない。
であればプロット全てを無理矢理組み込むのではなく思い切ってバッサリ切って、伝えたいことだけを丁寧に描くほうが作品の質は保たれた。

演出もテンポが悪く、脚本の冗長さと相まって、散漫な印象を受けた。
それを補うようにBGMを多用していたが、俳優がきちんと良い演技をしているのにBGMで状況を説明しようとするのはどうにもクドい。
久遠の暴走を目の当たりにした捜査一課や鑑識の面々が、それこそ役名なしの俳優も含めて、それぞれの役の気持ちを伝えるいい演技をしていたのに、そこをガヤ扱いにしてしまったのも大変残念だった。
久遠と文弥のキャッチボールのシーンも、2人に会話させればいいところを、なぜアフレコにしたのか全く意味不明だ。

一方で久遠とあすかのシーンや、来栖と冴子のシーンなど、男女2人のシーンではいい雰囲気の絵が見れた。シーズン後半に向けて色っぽい展開かあるかどうかわからないが、あっても面白い。
文弥の転落現場に到着した伊達たちをすり抜けるように久遠が走っていったシーンも、赤いアロハの残像が鮮烈な印象を残す良いシーンだった。
久遠が文弥の頬を摘むシーンも、遺体になったときだけ摘み方を微妙に変えることで、それが死体であることを伝える絶妙な演出だった。

俳優陣については相変わらず上手い。
ゲストの高杉亘は「ダメな父親から戻れなくなってしまった弱い男」を実に巧みに演じていた。錦戸の少年時代を演じるのは「流星の絆」に次いで2回目の嘉数一星も、独特の存在感で久遠の過酷な過去を鮮烈に印象づけた。
文弥役の渡邊甚平、まお役の佐々木麻緒も、ポテンシャルの高さを強く感じる子役だったし、綾田俊樹は相変わらずのイイ味だ。螢雪次朗の演技の幅にも驚かされる。

文弥の遺体を前にした錦戸の演技も素晴らしかったし、堺の「ばかやろう」も堺にしか出来ない複雑で繊細な演技だった。鹿賀については全く申し分ない。
平山とりょうの相性も予想外にいいし、錦戸と杏のケミストリーも現れてきている。土屋も堀田と久遠の間の微妙な感情を堀田らしく丁寧に演じている。とてもいい俳優だ。
永岡、佐伯、井上、鈴木もそれぞれキャラクターを確立してきていて見ていて楽しいし、捜査一課の役名なしの俳優たちも存在感のある良い仕事をしている。

ただ気になったのは錦戸のアフレコだ。
表情ひとつで鳥肌が立つような見事な演技をしてみせるくせに、アフレコとなったら学芸会レベルにまで落ちてしまう。もう少し落ち着いてゆっくり喋るようにしたほうがいい。

ストーリーについては今回初めて闇の制裁を受けずに法で裁かれる犯人が登場した。それはそれで正解だったと思う。

視聴者のカタルシスは「闇の制裁」によってしか得られないという訳ではない。
受けるべき罰から逃げた者に「応報の罰」が与えられるシーンが見れれば、それで視聴者はカタルシスを得ることが出来る。
その「応報の罰」は当然「法による裁き」であっていいし、「犯罪を立証した上での告発」でも構わない。ドラマらしく「悪人が自ら墓穴を掘って大恥をかく」的なものでもいいだろう。それこそ闇の裁きは3回に1回でも構わない。
穴だらけのプロットで無理矢理に「闇の制裁」に持ち込むほうが、逆にフラストレーションが溜まるというものだ。

今回伊達は「自分たちのしていることは復讐ではない」と言い切った。
もっとも今までの話を見ていると「第三者による恣意的な復讐(私刑)」にしか見えないので、説明セリフで帳尻合わせをしている感は否めない。
では「復讐」でないなら何であるべきなのか?それについては次回書きたいと思う。


事件のストーリーラインについては、久遠の過去に大きく触れるものだった。

このドラマでは「遺族の心の傷を癒すのは被害者との暖かい思い出と、遺族の心を思いやる第三者の理解である」というメッセージを発している。
第一話で幼い息子を殺された両親も、第二話で母を失った息子夫婦も、第三話の孝行娘を失った母親も、第四話の一人娘を逆恨みで殺された父親も、第五話の夫を自殺に追い込まれた妻も、失った家族が自分たちを愛してくれていたという事実に気づいて、悲しみを乗り越えようとしていた。
第六話の今回、その遺族の立場になったのは久遠だった。

父親からの虐待と捨てられたという痛みから抜け出せずに、苦しみ続けている久遠にとって、第三話の被害者・晴香や今回の文弥の痛みは、まるで自分のことのように感じられただろう。
もし久遠が伊達のように「誰かからの救いの手」によって苦しみから救い上げてもらっていたなら「親にすら虐待されてしまう自分」を受け入れることが出来たかもしれない。
しかし久遠は誰からも救い上げられることなく、どれだけ我慢してもそばにいたかった父親にすら、結局は捨てられてしまった。

4歳で母を失ってから虐待を受け続けていた久遠には、母親の記憶も、普通の子供が持っている暖かくて他愛ない日々の記憶すらもないだろう。
あるのは一度だけ父親に連れて行って貰った海の記憶と、母親の形見であるカメオのブローチが連想させる母親のイメージくらいなもので、文弥が必死で取り戻そうとしていた「優しかった以前の父親」も持ってはいない。
幸せだった時代の記憶があれば「いつかあの頃に戻れるかもしれない」と希望も持てる。しかしそれすらもないとなれば、虐待される理由を「自分」か「相手」に求めるしかなくなる。

親から暴力を受けている子供の殆どは「親は悪くない」「暴力を振るわれてしまう自分が悪い」と思い込む。
虐待される理由を「自分」に求めて、「愛されていない」のではなく「悪いことをしているから叱られているだけ」だと考えるのだ。
「父親は悪くない」と言った文弥を理解していた久遠もまた「父親に虐待されるのは自分が何か悪いことをしているのだ」と思っていただろう。

しかし大人になれば「虐待された自分」が悪いのではなく「虐待した親」のほうが悪いのだと理解るようになる。
それは同時に「ただ単に自分が親に愛されなかっただけ」という現実を目の当たりにすることにも繋がる。
どんなに酷い虐待の痛みよりも、この「どれだけ耐えても愛されなかった」という現実のほうが、はるかに深く久遠を傷つけただろう。
その行き場のない怒りと悲しみが久遠健志という男を形作っている。

親に愛されなかった自分自身を受け入れて愛してくれる他の誰かを探すでもなく、誰かに自分を分かってもらおうとするでもなく、自分を閉ざして「はみ出し者のチャラ男」の仮面をしっかりと被ってしまった久遠に、救いの道など残っている筈がない。
鑑識員として物証を掴み犯罪を暴く仕事は、久遠に「正義」という寄る辺を与えただろうが、同時に限界も見せたことだろう。

第三話、第六話と、久遠は犯人に銃口を向けた。
その先に見ていたのは憎い父親の姿だったのだろうか?おそらくそうではない。
久遠が消してしまいたかったのは「どれだけ耐えても愛されずいとも簡単に捨てられてしまった自分自身」、壊してしまいたかったのは「そこから抜け出すことが出来ない自分自身」だろう。

もし久遠が伊達という理解者を得なかったら、久遠は自分自身を受け入れることも、行き場のない怒りと悲しみを消化することも出来ないままに、独りよがりな「正義」に身を任せてしまったかもしれない。
堕ちることで自分を壊してしまっていたかもしれない。

何がなんでも守ろうと思っていた文弥を殺されてしまった久遠は、今回、文弥の実質上の遺族だった。
「遺族の心の傷を癒すのは被害者との暖かい思い出と、遺族の心を思いやる第三者の理解である」というドラマのメッセージの通り、久遠は文弥からの最後のメールで、ただ耐えるだけでなく抜けだそうとする勇気を受け取った。
文弥は殺されてしまったが、文弥との暖かい思い出は久遠の心の中に確かに残った。
そしてそんな久遠の心を理解してくれる伊達や三上もいる。
悲しみはそう簡単に癒えなくても、いつか時間が「苦しさ」を「憎しみではない何か」に変えてくれるだろう。

今回面白かったのはこの後だ。

文弥の父・広之が犯行を認め謝罪したのを見届けた久遠は、文弥と伊達からもらった勇気を胸に実の父親に会いに行った。
15年ぶりにあった父は、一度だけ連れていった海のことも、久遠がその絵を描き続けていたことも覚えていた。幼い久遠が描いていたのと同じ絵を一心に描いている父親の姿を見た久遠は、再び父親からの愛情を期待しただろう。
見ているこちらも「愛されていなかったわけじゃない」というオチになるのかと思っていた。

ところがボケ気味の父親は久遠が誰だか判らず、虐待して捨てた息子に向かって「どなたですか?」と穏やかに微笑んでみせた。
このときの久遠の気持ちは察するに余りある。勇気を振り絞って父親に会いに行ってみれば父親は息子のことすら判らない。しかも自分には微笑みかけてくれなかった父が、見も知らぬ人間には柔らかく微笑んでみせるのだ。
結局また久遠の気持ちは置いてけぼりにされてしまった。

そんな久遠を慰めたのは伊達でも三上でもなくあすかだった。
あすかは久遠が虐待されていたことも父親に会いに行ったことも知らない。ただ久遠が落ち込んでいるのはわかるから、何も言わずにそばにいようとしている。
文弥のそばに久遠がいようとしたように、久遠のそばにもまた、あすかがいようとしてくれる。

父親に捨てられたあとの久遠がどのように成長したかはわからない。
しかし、こうして理解ろうとしてくれる人を得ていくことで、久遠は過去を乗り越えていくのだろう。
そして久遠にとって大切な人が増えていけば、久遠の暴走や狂気もまた少し違った形で現れてくるのかもしれない。
久遠はやっと得られた大切な人々に彼なりの精一杯の献身をするだろう。伊達や三上、あすかに心を開いていけばいくほど、久遠の彼らへの思い入れは深まる。

伊達やあすかに比べて不完全で不安定だが、頭が切れて実力があるぶん、久遠は敵に回すと厄介な男だ。
似たタイプの敵とガチでやりあうところも見てみたいものだ。


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第六話:伏線?セリフ集

 
<5年前>

(夏樹殺害現場に駆けつける伊達と冴子。そこには変わり果てた夏樹の姿があった)

伊達「宮城…」

冴子「…どうして?」

(井筒が到着)

井筒「おつかれ」

(遺体の前にしゃがんで手を合わす)

井筒「宮城の携帯は?」

溝口「そこの遺留品の中にあります」

冴子「(苛立を滲ませて)それ、どうするつもりですか?」

井筒「何か手がかりが掴めるかもしれんだろ」

(井筒、夏樹の携帯の中身を見た後、その携帯を持って立ち去る)

***********************************************************

(前回続き。深夜に一人、夏樹の捜査資料を調べるあすか)

あすか「”捜査一課長の井筒将明”…どうして次のページがないんだろ」

(井筒、不意に背後からあすかの肩を掴む)

井筒「過去の捜査資料は持ち出し厳禁だよ?」

あすか「すみません」

(あすか、資料を返却するために立ち上がる)

井筒「あのさあ!(あすか振り返る)…片桐に何か言われた?」

あすか「(ひきつり笑いを浮かべて)片桐、って、誰ですか?」

井筒「ふ、ふふっ…判りやすいねえ君は。兄貴と一緒だ」

***********************************************************

冴子「木内亨、春日恒夫、山原哲司、椎名高弘、そして、氷川成美。今年に入ってから5名が神隠しにあってる」

三上「よく調べたな」

冴子「5名の共通点は、法の裁きから逃れたこと、消息が掴めないこと、そして、神奈川県警本部の捜査一課が動いていること」

三上「まさか警察内部の仕業だなんて言わないよな」

冴子「(伊達に向かって)あなたも捜査一課だよね。次は誰がターゲットになるのかなあ」

***********************************************************

(交番にいた少女まおから同級生の吉永文弥が虐待を受けているので助けて欲しいと言われた久遠は文弥の自宅を尋ねる。児相や刑事にも躾だと判ってもらったという文弥の父親・広之に対し)

久遠「あなたにとっては躾でも文弥くんにとってはそうじゃないかもしれない」

***********************************************************

まお「(文弥の家から戻ってきた久遠に)どうでした?」

久遠「あれ、虐待じゃないなあ」

まお「そんなあ」

久遠「そう思ってもらいたいはずだよ、君には。…大丈夫。文弥くんは俺が守ってやる」
***********************************************************

(捜査一課は連続強盗事件の報告会の最中。来栖は苦情電話に対応中)

来栖「大変申し訳ありませんでした(電話を切る)」

(久遠が部屋に入ってくる)

久遠「伊達さん、ちょっといい?」

来栖「おい、久遠!いま青葉台署から連絡があったぞ。おまえ吉永文弥に会いに青葉団地に行ったらしいな」

あすか「青葉団地って強盗傷害の現場付近だ…」

久遠「吉永文弥は虐待されてます。痣もありました」

来栖「吉永家はな、もう所轄が様子を見に行ってんだ。虐待の事実は本人が否定してるし、父親も躾の延長で…」

久遠「(来栖の言葉を遮るように)まともに見てねえのに何が躾だよ」

来栖「(怒った表情で久遠に一歩近づく)ああっ?!」

久遠「職務怠慢だって非難されたくないからとりあえず聴取しただけだろ?そんなのなんの解決にもなんねえよ」

(堀田が久遠を制するために来栖の前に進みでて、片手で久遠の襟元を掴み上げる)

堀田「おい、なめた口叩いてんじゃねえぞ」

久遠「(冷たく)はなせよ」

(ガチで喧嘩を売ってきている久遠に、堀田の目が一瞬で鋭くなる)

滝川「ちょっと!止めましょうよ!」

(井筒が部屋に入ってきて)

井筒「おっ、喧嘩か?いいねえ、やれやれ!」

滝川「課長!」

(堀田、久遠を睨みつけたまま手を離す)

井筒「なんだやらないのか。つまんねえなあ。…おい久遠、おまえバケツ持って廊下立ってろ」

久遠「なんで俺が!」

井筒「許可無く民家に入った罰だ。それと減俸三ヶ月。セットでね。セット料金」

***********************************************************

(廊下で両手に水の入ったバケツを持って立っている久遠)

滝川「落ちこぼれみたいですね。あ、落ちこぼれか。お先に~」

伊達「ああそういえば、話って何だったんだ?」

久遠「ああ、ケータイ借りようかと思って」

伊達「携帯?」

久遠「いや、俺のケータイ文弥が持ってんだよ。だからあいつと連絡取りたくて。俺が救ってやんねえと」

伊達「虐待か、躾か、その判断をするのは難しい。今のままじゃその文弥くんて子が虐待だと認めない限り、警察もこれ以上動けない」

久遠「伊達さんもあいつらと一緒かよ」

(伊達、久遠のシャツの胸ポケットに自分の携帯を入れて立ち去る)

***********************************************************

(バーmikami。伊達にファイルを差し出す三上)

三上「小僧の経歴だ。あいつ、4歳のときにおふくろを亡くしてから10歳までの間、ずっと親父から虐待を受けてたんだ」

***********************************************************

<15年前>

(夏の暑い部屋。クレヨンで無心に海の絵を描いている幼い久遠)

久遠の父「おい、酒買ってこい」

久遠「え…お金…ないけど…」

久遠の父「なけりゃ作ってくりゃいいだろ!」

(久遠を突き飛ばし、引き出しからカメオのブローチを取り出して放り投げる)

久遠の父「ほら!これ売って買ってこい!」

久遠「これ母さんの形見…」

久遠の父「いいから買ってこいよっ!」

(久遠の父、息子の顔めがけてカップ酒の空き瓶を投げつける)

久遠「あっ…」

(左目の上にもろに当たって血が流れる。背中には生々しい紫色の火傷痕が覗いている)
***********************************************************

(久遠部屋。引き出しの中からカメオのブローチと、ブローチが入っていた封筒を取り出す久遠。封筒には介護老人ホームの名前と住所が印刷されている。ブローチと封筒の住所を見つめたあと、伊達から借りた携帯を手に取る久遠)

(文弥の家。久遠から預かった携帯がメール着信を告げる。携帯を開く文弥)

久遠からのメール『俺、親に虐待されてたんだ くどう』

(驚く文弥)

久遠からのメール『学校の奴らにはバレたくなかった。だからいつもヘラヘラしてた くどう』

***********************************************************

(メール着信音。携帯を開く久遠。覗き込む伊達)

久遠「(嬉しそうに)文弥からの初メール」

文弥のメール『気持ち、わかる。 ふみや』

伊達「何の話?」

久遠「内緒~」

***********************************************************

あすか「これ、捜査資料まとめたものです」

冴子「ありがとう」

あすか「でも1ページなかったんです。…あの、井筒課長が容疑者だったって本当ですか?」

冴子「ん…5年前、井筒課長が使ってた情報屋が殺されてね」

あすか「はい」

冴子「その前日に井筒課長がその男と口論していたところを目撃されているの。その情報屋と井筒課長との関係を夏樹が単独で洗ってたら、一週間後に…」

あすか「それが容疑をかけられた理由ですか?」

冴子「2人とも同じナイフで殺されていた。しかも井筒課長がやったっていうタレコミまであって。でも物証は出てこなかった。課長も知らないの一点張り。…実はね、課長を取り調べたのは伊達なのよ。でも取調べは形式だけで、すぐに井筒課長の容疑は晴れた」

あすか「どうして」

冴子「アリバイがあったのよ。あの日、井筒課長は伊達と一緒に別の事件を追ってたの。川崎のコンビニ強盗殺人」

あすか「じゃあ井筒課長じゃないんですね」

冴子「そのアリバイが本当だったらね」

(表情が硬くなるあすか)

***********************************************************

(昼間は文弥の虐待について捜査しているため、青葉町連続強盗事件について捜査状況を追うために一人残業している伊達。井筒が帰りしなに伊達に声をかける)

井筒「妙なことと言えば、宮城が兄貴の事件を調べてる」

伊達「(どうとでも取れる表情で)そうですか」

井筒「…ま、心配するこたぁないか。お疲れチャン」

***********************************************************

(久遠と文弥、河原でキャッチボールをした後)

久遠「このまま誰にも言わないつもり?身体の傷のこと」

文弥「僕は何もされてない」

久遠「憎くないの?親父のこと。俺は許せなかった」

文弥「お父さんは悪くない。悪くないんだ」

***********************************************************

(久遠部屋)

あすか「久遠さんって過去引きずったりしますか?」

久遠「何、突然」

あすか「いや、私は全然切り離せなくって。今でも亡くなった兄のこと探してる気がします」

久遠「別にいいじゃん、それで。てか過去と向き合ってるだけ立派じゃね?俺なんか振り返りたくもないし」

(あすか、久遠の机の上のカメオと封筒に気づく)

久遠「あ、これ?(封筒を手にして)親父がここにいるんだよ、俺を捨てた。10歳のときだったから、もう15年会ってない。んで2年前にこれが届いて、ここにいること知った」

あすか「介護施設?」

久遠「うん(封筒を捻ってゴミ箱へ捨てる)ま、もう会うこともないだろうけどね」

***********************************************************

来栖「吉永文弥の虐待について調べてんのか。あのなあ、俺達が追わなきゃいけねえのは同じ青葉町でも窃盗団の方なんだよ」

伊達「は、はぃ」

来栖「勝手な真似すんじゃねえ」

伊達「はぃ、すみません…」

来栖「ああああ、ウザイ、ウザイ、ウザイ、…はーっ、ウザっっ!」

***********************************************************

(廊下で冴子と出くわす来栖)

来栖「おい、ここは部外者立ち入り禁止だぞ」

冴子「まあまあ、すぐ済むから」

来栖「ダメだ」

冴子「チッ。だったらこれ伊達に渡しといて」

(冴子、資料を来栖の鼻先に押し付けて帰っていく)

来栖「なんだ、あの女」

***********************************************************

<15年前>

(夏の暑い部屋。クレヨンで描いた海の絵。父親はいない。10歳の久遠がフラフラと立ち上がり、水道の蛇口に口を付ける。しかし水は出てこない。そのまま倒れこむ久遠)

***********************************************************

(文弥が死んだのは自殺で学校でのイジメが原因のように話す文弥の父親に久遠が殴りかかる)

久遠「何嘘ついてんだよ!全部てめえのせいだろ!」

(騒然とする現場。久遠を取り押さえる来栖・堀田・轟)

久遠「おまえが殺したんだろ、おまえが文弥を!」

(久遠の感情の爆発を静かに見つめる伊達)

***********************************************************

(堀田と轟に連れられて現場から出てくる久遠。そこにまおが現れる)

まお「嘘つき!」

(涙を溜めて久遠を睨みつけるまお)

まお「守ってくれるって言ったじゃない!嘘つき…!嘘つき!」

(泣きながら久遠の胸元を叩くまお。硬い表情で見下ろす久遠。痛まし気に見つめるあすかと伊達)

***********************************************************

(見張り付きで取調室に軟禁されている久遠。伊達が入ってきて見張りを代わると申し出る)

久遠「伊達さん…」

伊達「ばかやろう」

(伊達を見つめる久遠)

伊達「自殺の線で固まりそうだ」

久遠「ちょっと待ってよ。明日巨人戦観に行こうって約束してたんだよ?自殺なんかするわけねえだろ?」

伊達「そのあと心変わりしたのかもしれない。それはメールじゃ判断できない。それと父親の虐待を立証するのも難しいそうだ。転落の損傷が激しくて虐待の痕を確認出来ないらしい。君も知ってる通り、新しい傷が古い傷痕を消してしまうことはよくある」

久遠「俺見たんだって!文弥の身体には確かに痣があったんだよ!」

伊達「だとしてもそれが虐待の痕だと証明するのは難しい」

久遠「じゃあ…あの親父は法では裁けないってこと?」

(なぜか取調室の机に設置してあるカメラが作動していて、マジックミラーの向こうにある小部屋のモニターには久遠の顔が映っている)

久遠「頼む、伊達さん。裁いてくれ」

伊達「父親が文弥くんを虐待していたということも、彼を殺害したということも、何の確証も得られていないんだ。動くことは出来ない」

久遠「何でだよ!俺には判んだよ!あいつがやったんだって!あいつが文弥を殺したんだよ!文弥は間違いなく前を向こうとしてた。変わろうとしてたんだって!」

伊達「憶測で人を裁けばそれはただの犯罪者だ。君が憎んできた奴らと何も変わらない」

(久遠、泣きそうな表情を浮かべる)

***********************************************************

(右利きの文弥がベランダの手摺を乗り越えるのに左足を上げていたことに対して)

伊達「もちろんこれが証拠になるとは思っていません。ですが私に取っては十分過ぎる違和感です」

***********************************************************

(取調室に軟禁中の久遠。見張りはなぜか井筒)

久遠「なんで課長が俺の見張りなんすか?」

井筒「だってみんな忙しいんだもん。しょうがねえじゃん」

(井筒立ち上がる)

久遠「どこ行くんすか?」

井筒「ん?(タバコを吸う真似をしながら)トイレ。あ、おまえさあ、逃げんなよ?な、逃げんなよ」

(取調室から出て行く井筒)

***********************************************************

(文弥の転落現場にいる伊達。そこに窃盗事件を捜査中のあすかが現れる。あすか、少し躊躇ったあとに思い切って口を開く)

あすか「あの、5年前の兄の事件なんですけど。伊達さんが井筒課長を取り調べたって聞きました。井筒課長の犯行は本当に不可能だったんでしょうか」

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(窃盗団を逮捕し捜査一課に戻ってきた伊達。そこには久遠を見張っていたはずの井筒がいた)

井筒「あーご苦労さん」

伊達「課長…久遠を見ててくれたんじゃ…」

井筒「あ?ああ。ちょっと目を離した隙にさあ、どっか行っちゃった」

伊達「え…」

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(文弥の父・広之がパブから出てきたところをつける久遠。人気がなくなったところで広之を背後から蹴り飛ばす)

広之「おまえ…!」

(広之に銃口を突きつける久遠)

久遠「おまえが文弥を突き落としたんだろう?」

広之「何だよ…」

久遠「おまえが殺したんだろ?」

広之「…頼む…撃つなよ…な…撃たないでくれ、頼むよ…」

(広之の顔面を蹴り飛ばして気絶させる久遠)

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(埠頭に走りこむ久遠の車。待っていたのは三上)

三上「伊達はどうした?」

久遠「………」

三上「どうした?と聞いてる」

久遠「後から来るよ」

三上「おまえの独断か」

久遠「この男を始末して欲しい」

(車の後部には気を失っている広之が)  

三上「ハンパなことしやがって。誰なんだこいつは」

久遠「虐待で息子を殺した父親だよ」

三上「確証は?」

(伊達が現れる)

伊達「確証はありません」

久遠「伊達さん」

三上「だからこんな小僧は入れるなと言ったんだ」

久遠「こいつがやったんだよ!こいつが文弥を散々殴って蹴った挙げ句に、人形みたいに殺したんだよ!どんな仕打ちを受けてても文弥は虐待されてるとは言わなかった。何でだと思う?」

(久遠を見つめる三上と伊達)

久遠「親だからだよ。文弥は僅かな望みに掛けてたんだよ。こんな奴でも信じてたんだよ。いつか…いつか分かってくれるって。なのにこいつは改心するどころか文弥の命を奪った。許せるわけねえだろ!」

(伊達、静かに久遠を見る)

久遠「終身刑が出来ないなら、俺が殺してやる」

(広之に銃口を向ける久遠)

三上「久遠!…おまえガキの虐待を自分の復讐にしようとしてんじゃねえのか!」

(伊達の携帯が鳴る)

伊達「宮城くんからだ(電話に出る)はい」

あすか「文弥くんが殺されたって証言が取れました。例の窃盗団の一人が見ていたんです。窃盗の犯行がバレるのを恐れて黙っていたそうです」

(伊達、電話を切る)

伊達「吉永が文弥くんを殺害したところを目撃した人間がいたそうだ。…これで吉永を逮捕できる」

久遠「駄目だよ」

伊達「久遠」

久遠「パクってムショに入れたところでいつかは出てくる。人殺してんのに。あんな酷い仕打ちしてんのに。こんなクズいなくなったほうがいいんだよ」

伊達「それは君が決めることじゃない。法で裁ける人間は法で償わせるんだ。俺達がやってるのは復讐じゃない」

(伊達、携帯を操作して文弥の最後のメールを開く)

伊達「文弥くんが君に出した最後のメールだ。”巨人戦楽しみにしてる”その下にもう一文残してた。”勇気をくれて、ありがとう”。文弥くんは抜けだそうとしてたんだ。ただ耐えるだけの日々から。今度は君が抜け出すんだ。君が闇に葬るのはその男じゃない。過去の自分だ!」

(久遠、目に涙を溜めて銃口の先の広之を見る。久遠の中で様々な感情が葛藤する)

久遠「うあぁぁぁぁっ!」

三上「久遠っ!撃つな!」

(発砲音。弾丸は広之ではなく海に消えた。久遠の目から流れ落ちる涙。安堵する三上)

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(取調室)

広之「…私がやりました…すいませんでした…」

(マジックミラーの向こうで見ている伊達と久遠。自白を聞いて久遠は無言で小部屋を出て行く)

***********************************************************

(カメオのブローチが送られてきた封筒を頼りに、父親がいる介護老人施設を訪れる久遠)

介護士「久遠さん、絵、上手なんですね」

(その声の先には、寝間着を着て車椅子に乗った久遠の父が、クレヨンで何かを描いている姿があった)

介護士「久遠さん海が好きなんですか?」

久遠の父「一度だけ2人で見に行ったことがあるんです。”あいつ”はいっつもこの海描いてた」

(久遠の父が描いていたのは、幼い久遠が描いていたのと全く同じ構図の海の絵だった)

久遠「(ごくりと唾を飲む)”あいつ”って?」

(久遠の声にゆっくりと顔を上げる父親、見つめあう父子。父親が柔らかい表情を見せる)

久遠の父「あなたは…どなたですか?」

(久遠の目が悲しみに潤む。久遠を知らない人間だと理解した父親はまた絵を描き始める。その父の手にカメオのブローチをしっかりと握らせる久遠)

久遠「大事にしろよ。じゃあな」

(久遠、立ち去る。父親はカメオのブローチを見て何かに気づき久遠を視線で追うが、久遠は振り返らずに去っていく)

***********************************************************

(久遠部屋。元気のない久遠。そこにあすかがやってくる)

久遠「伊達さんならいないよ」

あすか「知ってます」

(あすか、久遠の隣に椅子を置いてそこに座る)

久遠「何?」

あすか「落ち込んでる時、誰かにいてもらうとホッとするんです。何も言わないでただそばにいてくれるだけで」

(久遠、あすかが何のために来たか理解する)

久遠「伊達さんに何か言われた?」

(あすか、無言の否定)

久遠「…サンキュ」

(あすか、頷く)

久遠「ちゅーしていい?」

あすか「(間髪置かず)だめ」

(いつものノリに戻って2人笑顔を浮かべる)

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(冴子、夜に捜査一課にいくと来栖だけが残っている)

冴子「チッ」

来栖「だからあ!」

冴子「部外者は入るな!でしょ?ちゃあんと伊達に資料渡してくれた?」

来栖「渡したよ!けど、何で今更5年前のコンビニ強盗殺人なんて。あんなにすぐ解決した事件…」

冴子「知ってんの?」

来栖「ああ。俺も所轄の署員として関わったんだ。本部の一課だった伊達と一緒に」

冴子「あなたが伊達と組んでたの?」

来栖「ああ」

冴子「あの事件の日、夏樹は殺された…。伊達と井筒課長とどこ捜査したか覚えてる?」

来栖「課長が俺達と一緒に捜査したことなんて一度もねえよ」

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<5年前>

(県警本部の応接室)

三上「どうして井筒をかばった?」

伊達「井筒課長はやっていません。なのにまるで警察全体が課長を犯人に仕立て上げているように思えたので」

三上「だから井筒のアリバイを偽ったのか?」

伊達「………」

三上「宮城夏樹の捜査が打ち切りになった。井筒が疑われたように警察内部にホシがいるのは確かだ。だったら不祥事になる前にもみ消そうってのが上の考えだ」

伊達「納得できません」

三上「未解決事件にさせたくない気持ちは俺も一緒だ。おまえと意見が違う点は一つだけ。俺は…井筒がホンボシだと思ってる」

***********************************************************

三上「あすかちゃんが夏樹の事件追ってるとはなあ。冴子ちゃんの入れ知恵か」

(靴音を立てて客が入ってくる)

三上「いらっしゃ…」

(客の姿を見て三上と伊達の表情が固まる)

井筒「…よお」

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久遠健志の父親

久遠健志の父親 … 螢雪次朗公式サイト

久遠健志の父親。久遠が4歳のときに妻を亡くし、酒浸りになって久遠に酷い虐待を繰り返した。久遠の背中にある酷い火傷痕やタバコを押し付けられた痕はこの父親によるもの。久遠が10歳のとき久遠を捨てて蒸発。今は静岡の介護施設に入所している。

・螢雪次朗 … 1951年8月27日生まれ、B型、埼玉県出身、身長170cm


<トリビア>
・アル中
・仕事はたぶん工事現場の交通整理員
・久遠は晩年に出来た子供のようだ
・息子に虐待で大火傷を負わせたり、タバコの火を押し付けたり、顔面めがけて近距離からワンカップの瓶を投げつける鬼畜な父親
・妻の形見のカメオのブローチを飲み代に使おうとしていたが結局使わず、久遠を捨てて家を出たときに唯一金目のそのブローチも持って出た。それから13年間久遠とは連絡を取っていなかったが、2年前に突然久遠の元にカメオのブローチを送りつけてきた。どこで久遠の所在を知ったのかは不明。ブローチは入所していた介護施設の封筒に入っていた
・施設の名前は「介護老人保健施設まほろばの家」417-0097静岡県富士市今泉4002-1
・一度だけ幼い久遠を連れて2人で海を見に行ったことがある
・現在は痴呆症状が現れているように見える
・捨てる前の久遠が繰り返し描いていた海の絵を覚えていて、介護施設で同じ絵を描いている。老いて息子との僅かな思い出と息子への愛情が蘇ったのかもしれない
・介護施設にいる自分を訪ねてくれた久遠を見ても息子だとわからなかった。カメオを渡されて相手が誰か気づいたかもしれない




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久遠健志(少年時代)

久遠健志(少年時代) … 嘉数一星公式サイト

4歳のときに母親を亡くし、以後10歳まで父親に虐待されて育つ。背中には酷い火傷痕やタバコを押し付けられた痕がある。学校には行っていた様子。10歳のとき父親に捨てられ、水道も止められた部屋で父を待つ。その後どうやって成長したかは不明。


・嘉数一星 … 1998年11月12日生まれ、沖縄県出身、身長138cm


<トリビア>
・1度だけ父親と2人で行った海を覚えていて、父親に捨てられるまで繰り返しその絵をクレヨンで描いていた。絵の中身はどれも全く同じで、未就学児から小学校低学年くらいの子供が描くような絵であったことから、海に連れてってもらったのはかなり前であることが推測できる
・親に虐待されていることを友達に知られたくなくて学校ではいつもヘラヘラしていた。もしかすると虐待されていることを絶対に知られたくない女の子もいたかもしれない
・母親の形見は青いカメオのブローチ。父親が飲み代に使おうとしていたが結局売らず、久遠を捨てたときに持って出た。2年前久遠の元に郵送されてきてからは久遠が所有していたが吉永文弥殺害事件の後、父親が入所している介護老人ホームを訪ねた久遠が父親に返した





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第六話:あらすじ

ある街で、宝石店などを狙った窃盗傷害事件が連続で起き、伊達一義(堺雅人)らはその捜査を担当する。

そんななか、事件を管轄する警察署から捜査一課にクレームが入った。久遠健志(錦戸亮)が、その付近で父親から虐待を受けていると噂される小学生・吉永文弥(渡邉甚平)を自宅に訪ねたからだ。すでに所轄の警察官が父親に会い、虐待はなかったと確認したのに、県警本部の久遠が訪問したことで所轄は体面を汚されたというのだ。結局、減俸に処されたが文弥が虐待されていると確信する久遠は、伊達から携帯電話を借りると、訪問時に文弥に渡した自分の携帯電話にメールを送る。そこで、自分も親から虐待を受けていたこと、それでも友だちにはそれを知られたくなくて誤魔化していたことを明かす。

同じ頃、久遠に父親から虐待されていた過去があったと知った伊達は、文弥の自宅周辺で聞き込みをはじめる。すると、文弥の父親・広之(高杉亘)が、酒グセの悪さで評判になっていることがわかる。久遠は、野球好きの文弥とキャッチボールをするなどして、距離を縮めていた。文弥は、虐待は認めないものの、自分を守ろうとする久遠の存在が心強かった。

その頃、宮城あすか(杏)は、"神隠し"を追う片桐冴子(りょう)の協力を得て、兄・夏樹(丸山智己)殺害事件の真相を突き止めようと動いていた。そのなかで、井筒将明(鹿賀丈史)が、夏樹殺しの容疑者だったという事実を知る。

そんな折、文弥が団地の4階にある自宅から飛び降りて死亡した、との知らせが入る。現場に駆け付けた久遠は、文弥の変わり果てた姿を見て立ち尽くす。そして、あすかが事情聴取していた広之に目をやる――と、広之は、文弥は学校でいじめに遭っていたらしい、としおらしい態度で話していた。そんな広之に久遠の怒りが爆発。いきなり殴り倒すと、さらに馬乗りになって殴ってしまう。

鑑識の捜査の結果、ベランダの手すりにあった両手の指紋と左足の足紋が文弥と一致したことから、自殺の可能性が濃厚となる。

伊達は、署内で謹慎させられている久遠にそのことを報告。久遠は、翌日に自分と野球の試合を見に行く約束をしていた文弥が自殺するわけがない、と反発するが、伊達は、それを示すメールだけでは判断できないし、そもそも広之が虐待していた事実さえ立証できないだろう、と答える。それでも久遠は、広之が文弥を殺害したのは間違いない、と必死に訴える。

その後、伊達は文弥宅を訪ね、再び現場を見ることに。そして、広之の前で、文弥がしたというように、ベランダの手すりをつかみ左足を乗せる動作をしてみせる。左足を乗せたのは左利きだったからか、と尋ねる伊達に、広之はそうだと答える。すると伊達は、文弥は右利きだが、あるプロ野球選手に憧れて、左投げ左打ちに変えていたことを明かす。文弥が久遠に送ったメールに、書かれていたのだ。広之は、右利きでも左足を上げることもある、と反論。伊達も、それ自体が証拠になるとは思わないが、それでも自分には違和感のある事実だ、と明言する。さらに、文弥がスポーツバッグのなかに隠していた複数の酒瓶を見せ、文弥は、広之に酒を止めてほしかったのだろう、と言う。

一方、窃盗団を追っていた来栖淳之介(平山浩行)らは、ついに、犯人と思われる若者3人組を確保する。あすかは、そのうち見張り役だった男を事情聴取。すると男は、文弥がベランダから突き落とされるのを目撃したと証言する。

そんなあすかからの電話を受けたとき、伊達は、埠頭にいた。久遠が独断で広之を制裁し、三上国治(大杉漣)を呼びだした現場に駆け付けたところだった。これで広之を逮捕できる、と言う伊達に、久遠は"神隠し"に遭わせると譲らない。文弥に、幼い頃の自分を重ねていた久遠は、どうしても広之が許せないのだ。伊達は、そんな心情を理解しつつも、自分たちがやっていることは復讐ではないのだ、と諭す。そして、久遠は気づいていなかったが、文弥からのメールの最後に「勇気をくれて、ありがとう」とメッセージがあったことを伝える。虐待に耐える日々から抜け出そうとしていた文弥のためにも、広之ではなく、自分自身の辛い過去を闇に葬るんだ、と説得する伊達。久遠はついに、それを受け入れた。

後日、警察で取り調べを受けた広之は、自分の罪を認め、泣いて謝罪する。

その頃、久遠は、父親・荘平(螢雪次朗)が暮らす介護施設にいた。車椅子に座り介護士に世話される父親の姿を見た久遠は、近寄って声をかけるが、荘平は久遠を認識しない。久遠は、そんな父親の掌に、母親の形見のブローチを握らせると、その場を立ち去る。

そんな日の夜、来栖は捜査一課にやってきた冴子に、どうして5年前のコンビニ強盗殺人事件を追っているのか、と尋ねる。資料によると、当時、伊達と井筒がその事件を追っており、それが、夏樹殺害事件の井筒のアリバイとなっているものだからだ。来栖が事件を知っていたことに冴子が驚くと、来栖は自分も伊達と一緒に事件を追っていたのだ、と話す。そして、井筒が捜査に加わっていたことは一度もない、と驚くべき証言をする。

同じ頃、三上のバーにいた伊達は、5年前のことを思い出していた――。当時、刑事だった三上に呼び出された伊達は、井筒のアリバイ工作をした理由を聞かれていた。井筒はやっていないのに、警察全体が井筒を犯人に仕立て上げているように思ったからだ、と答える伊達に、三上は、夏樹の捜査が打ち切りになったと伝える。そして、警察内部に夏樹殺しの犯人がいるのは確かだが、上層部がそれをもみ消そうとしていること、さらに、自分も井筒が犯人だと思っていることを、打ち明けた。

伊達がそんなことを思い出し、考えを巡らせているとき、バーのドアが開いた。入ってきたのは、井筒で…。


(以上公式サイトhttp://www.fujitv.co.jp/JOKER/index.htmlより)


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第六話:概要

放送日: 2010年8月18日
タイトル: 「CRIME6 子供の虐待…救えない命…」
演出: 都築淳一


<ゲスト>

吉永広之: 高杉亘


いわせ酒店の店主: 綾田俊樹

吉永文弥: 渡邊甚平


まお: 佐々木麻緒

窃盗団の一人: 松永一哉


宮城夏樹: 丸山智己


久遠健志の父親: 螢雪次朗

久遠健志(少年時代): 嘉数一星


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2010年8月17日火曜日

第五話:感想

この脚本家は3話づつ区切って仕上げてるのだろうか?
第一話と第四話は力を入れて作っているのがわかる台本、第二話と第五話は練りきれてない台本、第三話は役者の力がものを言うエモーショナルな台本、と順に回っているようにみえる。
今回の第五話の脚本は第二話同様、3話ローテーションの中では最も構成が甘い回で、美人局のくだりも不要だった。
このタイプの回は視聴者離れを引き起こす可能性がある。
ジョーカーには既に固定視聴者が付いているようだが、第三話が第二話よりも下げたように、次の第六話の視聴率も第五話より若干下がるかもしれない。

第五話においては、伊達たち闇の制裁人が「どのような人間を制裁の対象にするか」という点で、これまでとは違う判断をしていることが気になった。
伊達たちはこれまでも「法の裁きを逃れた者」が制裁の対象だと話している。また今回は三上が「自分たちが裁くのは最後の最後。とことん警察が追ってそれでも駄目だったときに動く」とも述べている。
それらと同時に、伊達たちには「自分たちが与える制裁の重さが、本来受けるべき法の裁きの重さと比べても”妥当”と思われる者」というルールもあるはずだ。

伊達たちの制裁は「一生あるところに閉じ込めて社会には出さない」というもので「おまえに明日は来ない」と宣言していることからも制裁の重さが伺える。
法の裁きで与えられる量刑に例えても「仮釈放なしの無期刑」という非常に重いものだ。
伊達たちが与える制裁は現在のところ一種類しか示唆されていない。
例え相手が性悪で腹のたつ人間であっても、そもそもの法の裁きが有期刑のレベルの犯罪者を、自分たちの勝手な判断で過剰制裁に科してしまったら、伊達たちはただの義賊気取りの狂った犯罪者でしかなくなってしまう。

これまでの犯罪者が第四話を除き、立件されれば多少なりとも死刑や無期刑の可能性があったのに対し、今回の女弁護士はドラマで明らかになっている範囲では死刑や無期刑の可能性はまずない。

弁護士として、満足する報酬を払ってくれる依頼人の仕事を引き受け、依頼人の希望に沿うよう全力を尽くす。それ自体には全く問題はない。
裁判官や検察官と違って弁護士というのは依頼人の味方をするのが仕事である。依頼人の希望(無罪や減刑)を勝ちとるために働いて、それによって報酬を得る商売なのだ。それで高額の報酬を得ようと外野がとやかく批判するものではない。
多額の報酬を得る仕事をしている=悪徳ではないのだ。

では氷川が行っていたことが何にも抵触しないのか?と言われればそうでもない。
弁護士は弁護士法によって「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することが使命である」と明確に規定されている。
本来弁護士は依頼の目的が社会正義に照らして不当であると判断される場合にはその依頼を受けてはならないのだ。
椎名が心神喪失でないことを承知の上で依頼を受けたと証明されれば、弁護士としての姿勢に反したとして、弁護士会より懲戒処分を受ける可能性はある。

また、美人局を使って幸田を嵌めたことについても、氷川の指示であることが立証出来れば、美人局の主犯格として有罪判決を受ける可能性が高い。
しかし執行猶予期間中の柿原沙世をあっさり切ったところを見ると、柿原が逆上して洗いざらい証言したとしても、共犯の立証は難しいレベルなのだろう。

フリーのルポライターに事実に反するネタを流した件についても、記事が与えた損害をネタの提供者に求めることは難しい。
自分でネットに書き込むなりしたのならともかく、この場合は何の事実確認もせず掲載した(もしくは確信犯で掲載した)編集人や発行人、ルポライターに責任がある。
幸田への自殺教唆も、この記事を出されたら奥さんが傷つきますよ、鑑定書の捏造なんて私は知りません、手は汚したくありません、だけでは自殺教唆としての立件は難しい。

ドラマ中であすかが「法を悪用して相手を陥れるってある意味完全犯罪ですよね。法じゃ裁けないってことですから」と言っているが、残念ながらあすかは根本的に間違っている。
「法を悪用する」ことと「法に触れない」ことは全く異なることなのだ。
氷川がやっていることは法律の知識を活かした「法に触れない」ことであって、法に触れないことであれば法で裁けないのは当然である。

氷川は社会正義の実現のためでなく私利私欲のために働く性質の悪い弁護士だったし、自分の利益のためなら手段を選ばない悪徳弁護士でもあった。
しかし凶悪犯罪の実行犯などではない。横浜連続殺人事件でも犯行に及んだのは椎名であって氷川は共犯ですらない。
幸田の精神鑑定捏造を暗に指示したにせよ、法廷での審理は正常に行われており、当然検察の証拠調べなどの課程も経ている。その上で氷川は無罪の判決を勝ち取っているのだ。鑑定書の捏造にも気づかず、心神喪失でないことも見破れず、控訴すらしなかった検察のほうがよほど問題である。
ちなみに実際に心神喪失で無罪判決が出るケースはまずない。精神鑑定を演技で切り抜け続けるのは不可能と言っていい。

氷川のような弁護士は弁護士の風上にも置けない人間だが、犯罪者としてはせいぜいが「有期刑+懲戒+社会からの冷たい目」くらいの犯罪者である。
盗聴テープを動画サイトにでもアップして悪事を世間に知らしめるだけで社会的信用は地に落ちる。権力からは見捨てられ、あらゆる人間から罵倒されて、屈辱に歯ぎしりをする氷川を見るだけでも充分カタルシスが得られただろう。

しかし伊達たちは氷川に従来の重い闇の制裁を与えた。そこに法の根拠はない。
椎名の判決は覆らないにせよ、幸田の遺書を公表することで氷川の悪事を陽のもとに晒すことだって出来たのに、伊達たちはそれもしていない。ただ自分の正義感をものさしにして、勝手に他人の罪の重さを決めて、私刑を行っただけだ。
もしそれを行ったのが正義に耽溺する久遠であれば納得がいく。
しかし伊達はそうではない。

たとえ自分が与える制裁の重さが法の裁きで与えられるべき刑の重さより軽くても、相手がどんなに最低な人間であっても、それでも伊達は、「闇の制裁という私刑は決して許されることではない」と言うだろう。
その上で、その許されないことをしなければならないことを、とても哀しいことだと伊達は感じている。そして、こんな哀しいことをするのは自分一人でよかったのだと思っている。

今回も伊達は最後の最後まで氷川の良心を信じようとしていた。捜査一課全員に徹夜で協力してもらって幸田を保護しようと努力していた。幸田の口から真実が語られること、それが氷川の悪事が裁かれるための本来の道筋であることを伊達は承知していた。
脚本上でそれだけの積み重ねをしていたにも関わらず、氷川を闇の制裁にかけてしまった時点で、伊達の苦悩が非常に安っぽいものになってしまった。

別に毎回制裁を行わなくても氷川を敵キャラとして生かしておく手もあった。もしくは闇の制裁ではない制裁方法をとっても良かった。
伊達が闇の制裁の何を哀しいと思っているのか。それがこのドラマの最大の肝のはずだ。
その説得力を不用意に揺るがすようなことは避けたほうがいいだろう。

ゲストに関しては鈴木砂羽、小須田康人、丸山智己がいい演技をしていた。

鈴木砂羽が演じた氷川成美弁護士は、頭がよくて、美人で、高慢ちきで、人を見下していて、金と権力が大好きだ。
法に触れるようなヘマはしないと言い放つ自信満々な熟女だが、視線をしっかり合わせて正面から斬り込んでくる伊達の前では、だんだん言わなくてもいいようなことまで話し始めてしまうのが興味深かった。

おそらく氷川は無意識のうちに伊達に惹かれ始めていたのだろう。それを予感させるのでなければ、敏腕弁護士が手の内を話し始めるのは不自然だ。
しかしその氷川の心を伊達が感じ取るくらいに判りやすく演じたら、いつもの制裁のように氷川を撃つ伊達に視聴者は違和感を感じただろう。
鋭い伊達がそれを感じ取らない程度に、もし感じ取っていたとしても制裁の邪魔にならない程度に、でも画面を通して視聴者にはそれがうっすらと滲むように演じた鈴木の演技力は大したものだ。
堺との相性もよさそうなので準レギュラーとしてもう少し残しておいてもよかったのに残念だ。

ゲストでは幸田弘道役の小須田康人も非常によかった。
自殺まで追い込まれる前に、誰かに助けを求めるチャンスも妻と一緒に頑張るチャンスもあったのに、氷川に押されるままに追い詰められてしまった幸田の性格を、小須田は少ないカットで繊細に表現していた。
真面目で、打たれ弱く、争いごとを続けるのが苦手で、優しくて、息子を亡くした後はまるで腫れ物にでも触るようにそっと大事に妻に接してきただろう背景が、小須田の演技により伝わってきた。
最も素晴らしかったのは最期の写真に写った幸田の悔いのない笑顔だ。百のセリフより一瞬の演技。写真一枚で泣かせてくれる役者も久しぶりだと感動した。

対して些か期待はずれだったのは幸田京香役の春木みさよだ。
最後の涙を流すシーンは良かったが、演技力そのものが鈴木や小須田に比べて足りない。役柄を掘り下げている様子もなく、チョイ役を演じるようにさらりと流してしまっていたのも残念だ。
良くも悪くもこのドラマは役者の演技力に左右される。脚本や演出でカバーしきれない役柄の細やかな感情や背景を、役者が役を掘り下げることで補完しているのだ。だからこそ視聴者は飽きることなく1時間を楽しむことが出来る。
たとえセリフがなくても、見切れていても、役名すらない俳優でも、映画のように丁寧に演じているところがこのドラマの最大の良さだ。
雰囲気はある女優なので次の機会に期待したい。

今回初登場の宮城夏樹役の丸山智己は、杏演じる宮城あすかと兄妹だということが無理なくわかる演技で大変面白く見れた。
あすかを夏樹が真似ているのではなく、あすかが兄夏樹に影響されて似ているのだと、ちゃんと思えるところが素晴らしい。
あすかよりも更に熱血で、身体も声もデカくて暑苦しく、裏表がなくて男気があって、優しい。あすかたち家族に心から愛されていた夏樹の姿がそこにあった。「こんな兄貴が殺されたんなら、そりゃあ悲しくてたまんないよな」と素直に思える夏樹像だった。

「ジョーカーのストーリーライン」については夏樹の登場で大きく展開した。
ナイフの刃先を上に向け、左上腹部から肋骨の下にえぐり込むような殺し方は明らかに素人の殺し方ではない。膝の後ろを蹴って体勢を崩すのも体術の基本技だ。夏樹を殺した犯人は明らかに訓練された人物である。
夏樹が犯人を「あなた」と呼んでいることからも伊達たち同僚ではなく目上の者だということがわかる。

しかし夏樹を殺したのは井筒ではないだろう。
井筒が使っていた情報屋のチンピラも夏樹と同じように左上腹部を一突きされていた。おそらく情報屋殺害も夏樹殺害も同一犯による犯行だ。
井筒がラストに言っていた「余計なことを嗅ぎ回ると消される」の言葉通り、情報屋も夏樹もそのせいで殺されたのだと思われる。井筒は夏樹に関わるなという合図を出していたが、結局は夏樹を守れなかったということだろう。そして今度は冴子が危険であることを伊達に伝えている。
椎名が神隠しに合う可能性があると冴子に聞いた後、冴子の前から消えたのも、伊達たちを守るために消えたのかもしれない。

伊達、久遠、あすかの間にも微妙な変化が現れてきている。
伊達の前ではチャラ男の仮面の下の本来の姿を見せるようになってきた久遠だが、あすかの前でも仮面の下の素顔を覗かせるようになってきている。
それは久遠に取っては良いことで、これからだんだんと他の人の前でも本当の自分が出せるようになってくるのかもしれない。

遺体安置室の前で伊達を待つ久遠とあすかは、疲れて傷付いた顔をしていた。
伊達がそこにやってきたとき、2人の表情に伊達を頼りに思う感情が現れていたが、久遠とあすかの表情は異なっていた。
あすかは信頼する上司を見つめる刑事としての顔、久遠は年の離れた兄にすがるような顔だ。
早く一人前になりたいと言っていたあすかは、一人前の刑事としての道を歩んでいる。信頼出来る人が欲しかった久遠は誰かに助けを求めるということを覚えた。
夏樹の事件やこれから起こる事件が、久遠やあすかにどんな影響を与えるのかわからないが、悩んで苦しみながらも成長していくだろう2人を楽しみにしたいと思う。


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2010年8月16日月曜日

第五話:伏線?セリフ集

 
井筒「謹慎明けてよかったな」

伊達「ご迷惑おかけしました」

井筒「おまえの尻拭いには慣れてる」

伊達「はは…」

(伊達とあすか、廊下を歩きながら)

あすか「伊達さんと課長って長いんですか?」

伊達「昔はあんなに気安く離せなかったけどね」

あすか「怖かったんですか?」

伊達「ま、君の兄さんはそうでもなかったみたいよ」

あすか「そうなんですか?」

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<5年前>

伊達「まさか君と同じ班になるとはねえ」

冴子「まあどこにいてもやることは変わんないけどねえ。…被疑者は逃走中か。面倒なヤマになりそうだね」

(井筒が部屋に入ってくる)

井筒「簡単な事件なんて一つもないぞ。まだ来ないのかもう一人は!」

(夏樹、廊下を小走りに走る)

夏樹「ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ…」

(居住まいを正し捜査一課のドアを開け)

夏樹「遅れて申し訳ありません!(井筒の机の前まできて)今日から強行犯係4班に配属されました宮城夏樹です。よろしくお願いします!」

井筒「異動初日から遅刻とはいい度胸してるな」

夏樹「この借りは捜査で返します」

伊達「まだこれから捜査会議だよ」

夏樹「伊達!冴子も!なんだおまえらと一緒かよ!」

冴子「今気づいたの?」

夏樹「なんか楽しくなりそうだなあ。よろしくな!」

井筒「勝手に盛り上がってんじゃないよ」

夏樹「すいません」

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(あすかが運転するパトカーから口元を押さえて出てくる伊達)

伊達「おえっ…ぷ」

あすか「そんなに私の運転荒いですかぁ?」

伊達「気にしないで僕の三半規管のせいだから」

***********************************************************

冴子「課長」

井筒「あ」

冴子「課長が帰られたあの晩、椎名は姿を消しました」

井筒「何だよ、まだ疑ってんのか。結婚記念日でレストランを予約してたから抜けただけだよ」

冴子「もういいですよ。今日は宣戦布告に来たんです」

井筒「…そいつは穏やかじゃないね」

冴子「私、本格的に追いかけることにしましたから」

井筒「神隠しか?」

冴子「もう神様の仕業にしておくわけにはいきません」

井筒「…だったら誰の仕業だって言うんだい」

***********************************************************

(ロックされた金庫を前に)

あすか「伊達さんが開けるんですか?」

伊達「(上着を脱ぎながら)昔バイトで」

(耳を金庫に押し当てて真剣な表情でダイヤルを回し、上体を起こして神妙な顔であすかの顔をみる)

あすか「開いたんですか?」

伊達「無理でした」

あすか「…ですよね」

(しばらく後。金庫に聴診器を当ててダイヤルを回す久遠)

久遠「あのねえ。オレ鍵屋さんじゃないんだよ?」

伊達「知ってるよ。鍵も開けられるイケてる鑑識員でしょ?」

久遠「あすかちゃんとデート出来るって約束がなければ引き受けないんだよ、こんなこと」

あすか「そんな約束してませんから」

久遠「あれ、そうだっけ」

(久遠、鍵を開ける)

あすか「開いた」

久遠「(あすかに向かって)じゃどこいく」

(あすかと伊達、久遠を無言で押しのけ、金庫の中身を見る)

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久遠「柿原沙世に前科があったんだ」

伊達「5年前に婚約者を殺害?」

久遠「でも正当防衛で執行猶予が付いてる。しかも担当弁護士が氷川成美。柿原は利用されたのかもね。あの女弁護士に。そして幸田さんも。…早く見つけ出さないと真実が埋もれちゃう」

(伊達の目が厳しくなる)

***********************************************************

冴子「ごめんね、呼び出して」

あすか「あ、いえ。あの、伊達さんに内緒の話って」

(冴子、書類封筒をあすかに差し出す)

あすか「なんですか、これ?」

冴子「まだ世の中に流れてない原稿。ギブアンドテイク。ここからが本題。その封筒の見返りに夏樹の事件を一緒に調べて欲しいの」

あすか「どうして…?」

冴子「夏樹が殺された頃から神隠しが始まってる。5年前、夏樹はある事件に巻き込まれたんだ。夏樹の事件に神隠しに辿りつくヒントが隠されてるかもしれない。あなたも知りたいんでしょ?…誰が夏樹の命を奪ったのか」

***********************************************************

<5年前>

(チンピラの他殺体が海岸に打ち上げられる。現場に到着する伊達、冴子、夏樹。井筒は一足先に遺体の見分を始めている)

夏樹「こいつ、井筒さんにネタ流してた情報屋だ」

冴子「え?」

夏樹「井筒さん、こいつ…」

井筒「(夏樹を無視して)どこの組のもんだ?早く身元割り出せ」

(井筒立ち去る)

冴子「なんだ、知らないじゃん」

夏樹「違う。バレたくないんだよ。このヤマ、ただのチンピラの喧嘩じゃないかもな」

伊達「宮城、おまえ俺達に何か隠してるんだろう」

夏樹「何だよ急に」

伊達「どこでガイシャの素性を知った?」

夏樹「おまえは関わるな。おまえに何かあったら冴子が悲しむ。…付き合ってんだろ?おまえら?(伊達と冴子、顔を見合わす)…はは、わかりやすいんだよ、おまえら」

(夏樹、立ち去る)

***********************************************************

三上「あの氷川って女弁護士、どうするつもりだ?」

久遠「人権派とか言ってるけど実際は相当腹黒いよ?金になりそうな被告人ばっか選んでるって話だし。椎名の事件も親が資産家だから裏で大金が動いてたらしい。その資金を利用して近く政界にも進出するって噂もある。暴力団とかブラックな連中とも繋がってるみたい」

三上「裏社会の権力者同士が手を組むほど厄介なものはねえ。法で裁けるのか?」

伊達「このままじゃ無理ですねえ。幸田さんに会えれば氷川から脅されていた事実を知ることが出来るのですが」

久遠「もう面倒臭いからやっちゃおうよ」

三上「小僧、まだわかってねえのか!俺達が裁くのは最後の最後だ。とことん警察が追ってそれでも駄目だったときに動くんだよ!」

久遠「わかってるよ。冗談だって!」

三上「ふん!(久遠を殴るふりをする)あ、ビビってんの」

久遠「(小声で)ビビってねえよ」

三上「マジビビったろ今」

久遠「(更に小声で)ビビんねえよ」

伊達「ひとつ気になるのは奥さんの言葉だ。あの写真が流出するくらいなら鑑定の捏造なんてしない。だとしたら幸田さんは何を守ろうとしていたんだ?」

***********************************************************

あすか「幸田さんが三浦海岸の公衆電話から電話を掛けていたことがわかりました」

井筒「よし。宮城は幸田の妻にゆかりのある場所を聞き出せ」

あすか「はい」

井筒「他の者は現場に直行しろ。何かあったら逐一連絡するように」

捜査一課一同「はい」

伊達「すみません。自分の我儘にみんなを付き合わせてしまって」

(来栖、伊達に振り返って)

来栖「勘違いすんじゃねえ。別におまえのためじゃねえよ」

(来栖、立ち去る)

井筒「幸田を見つければ無差別殺人事件の全貌も明らかになる。いいか、必ず助けろ」

伊達「はい」

(廊下で久遠から声を掛けられる)

久遠「伊達さん!これ三浦の公衆電話の通話記録なんだけど面白いことがわかったよ」

***********************************************************

伊達「最後にひとつだけ聞かせてください。あなたにとって法とはなんですか?」

氷川「…くだらない」

(最後まで伊達を見据えたままゆっくりとドアを閉じる氷川)

***********************************************************

(救急車の中、死亡した幸田を前にする来栖と久遠)

来栖「…こんな結末ってありかよ」

(久遠、呆然と幸田の遺体を見つめる)

***********************************************************

(安置室の前で暗い表情で伊達を待っていたあすかと久遠。安置室には幸田の遺体と幸田の妻の姿が。幸田の妻が伊達に向かって深々と頭を下げる)

(夕日の差し込む久遠部屋。安置室から戻って来たあすかと久遠。壁に寄りかかって腕を組むあすかと、疲れたようにソファに深く座って俯く久遠)

久遠「…ご迷惑をお掛けしましただって。泣きつかれたり殴られたりするよりよっぽど堪えるよ」

(辛い心情を素直に口に出す久遠に、あすかは穏やかな口調で)

あすか「久遠さん。…なんか雰囲気…変わりましたね」

久遠「(ゆっくりとあすかを見上げる)…あ。もしかして惚れちゃった?」

あすか「(お約束の答えを言うように)違います」

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(氷川の事務所。急に電気が消える)

氷川「誰?」

(伊達と久遠が現れる)

伊達「おまえが幸田さんを自殺に追い込んだんだな」

氷川「だったら何?死人に口なしって言葉知らないの?私の言動は法に触れていない。法を冒さなくても人は殺せるのよ。あなたを社会的に抹殺することだって容易いのよ。法律はね、弱者を救うためにあるんじゃないの。そんなの幻想でしかない。もともと選ばれた人間のためにあるの。権力を持つものだけが得をするように作られてるのよ。あなたもわかるでしょう?権力側の人間だもの。ははは。利用出来ない人間が馬鹿なのよ!」

(伊達、銃口を氷川に向ける)

氷川「は。何?私を撃つつもり?」

伊達「法の裁きを逃れてもおまえの罪は消えない」

氷川「カッコつけないでよ。こんなことしてただで済むと思ってるの!」

伊達「おまえにあしたは来ない」

(伊達、引き金を引く。麻酔弾が氷川に当たり氷川が椅子に崩れ落ちる。背後から歩いてきた久遠、伊達の表情を見て少し怒ったように)

久遠「また悲しい顔して。こんなやつのための伊達さんが傷つくことないよ」

伊達「…運ぼう」

***********************************************************

幸田の妻「色々ご迷惑をおかけしました」

伊達「いえ。…そうだ」

(伊達、幸田の遺品のライカM7を取り出す)

幸田の妻「これは…」

伊達「幸田さんのカメラです。傍らに置いてあったそうです。一枚だけ撮られてましたよ。余計なお世話だと思ったんですが」

(伊達、幸田の妻に写真を渡す。そこには最後に自分で自分を撮った幸田の満足そうな笑顔があった)

幸田の妻「(泣きながら)写真映り悪いんだから…」

伊達「でもいい笑顔です」

幸田の妻「どうして…私なんかのために…どうして…」

伊達「あなただからですよ。あなただからご主人は命に変えて守ったんです」

***********************************************************

(伊達が署の廊下を歩いていると井筒が出てきて)

井筒「妙なことに首突っ込むと消されちまうのは、どの世界でも一緒らしい。ああそうそう。片桐が神隠しを追っているらしい。あいつも余計なマネしなきゃいいけどなあ」

***********************************************************

(夏樹が殺された現場に花を手向ける冴子)

冴子「…絶対犯人見つけるから」

<5年前>

(未明に一人で路地を歩く夏樹。物陰に潜んでいた男が持っていたサバイバルナイフの歯をクルリと上に向け、路上に飛び出し夏樹を襲う。相手の手首を掴み防戦する夏樹。男は夏樹の膝の後ろを蹴り上げ体勢を崩させて、夏樹の正面に回り込み夏樹の上腹部を刺す。苦痛の声を上げる夏樹。刺されながらも犯人の顔を見ようと顔をよじる。犯人の顔を見て驚く夏樹)

夏樹「…どうして…あなたが…」

(犯人、トドメを刺すように深く突き刺したナイフを更に上に持ち上げてえぐる。崩折れる夏樹)

***********************************************************

(深夜一人で夏樹殺害事件の報告書をめくるあすか。報告書の考察の中に「捜査一課長の井筒将明」という文字を見つけるが、続くページがなぜかファイルされていない)

あすか「捜査一課長の井筒将明…何で次のページがないんだろ…」

(背後からあすかの肩を叩く井筒。驚いて見上げるあすか。井筒は本心の見えない目であすかを見つめる)

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フジテレビ・オン・デマンドジョーカー許されざる捜査官
一話315円、全話1575円

2010年8月11日水曜日

第五話:あらすじ

伊達一義(堺雅人)は、無差別殺人犯・椎名高弘(窪田正孝)が、どうやって心神喪失を装っていたのかが気にかかる。宮城あすか(杏)は、精神鑑定士を上手くだましたのでは、と言うが腑に落ちない。

そんな折、練炭自殺を図った男女3人の遺体が発見された。3人は、昨年起きた、高校生殺人事件の被害者家族だった。被害者家族がなぜ――と驚くあすかに、久遠健志(錦戸亮)は、3人の個人的な問題を派手に書きたてた週刊誌の記事を見せる。伊達は、たとえ記事が真実だったとしても、一家心中を図るまで追い込まれた理由が気になる。すると、記事を見ていたあすかが、伊達を呼ぶ。なんと、高校生殺人事件の加害者の弁護士と、椎名を担当した弁護士が同じだと言うのだ。

早速、伊達とあすかは、弁護士・氷川成美(鈴木砂羽)を訪ね、被害者家族がバッシングを受けるようになった原因が、成美の発言にあったのでは、と切り出す。しかし成美は、それを一蹴。さらに、椎名の鑑定も、心神喪失で間違いはないと自信を覗かせる。そんななか、片桐冴子(りょう)から、椎名の鑑定を行った精神鑑定士・幸田弘道(小須田康人)が行方不明になっているとの情報が入る。伊達と同様、椎名の偽装だけで鑑定結果が誤魔化せるはずはないと感じていた冴子は、鑑定士に目を付けたのだ。

翌日、伊達とあすかは、幸田の自宅を訪ねる。妻・京香(春木みさよ)は、最近、幸田の様子がおかしかったと証言。伊達らが自宅を調べると、金庫から京香に宛てた遺書が見つかり、そこには、椎名の精神鑑定結果を改ざんしたと書かれていた。遺書を見つけたことで京香は動揺するが、伊達は、遺書は人目につきやすい場所に置くものだから、金庫にあったということは自殺の前段階だと考えていい、と話す。さらに、金庫には預金通帳があり、そこに氷川弁護士事務所から 500万円の入金記録があった。ところが、同じ日にその全額が、柿原沙世という人物宛てに振り込まれていた。

その後、伊達が柿原沙世(菅原禄弥)を取り調べたところ、沙世はいわゆる美人局で、幸田と撮った写真をネタに500万円を要求していたことがわかる。しかし、沙世は、金は好意でもらったものだと主張。そんなところへ、沙世の担当弁護士だといって成美がやって来る。

伊達は、幸田に精神鑑定の改ざんを引き受けさせるために、成美が沙世を幸田に接近させたと確信。伊達の主張を聞いた成美は、自分は幸田に、椎名をどうしても勝たせたい、希望の報酬を支払うから力を貸してほしいと言っただけで、改ざんを頼んだ覚えはない、と言い切る。

その頃、あすかは冴子に呼び出され、ある原稿を手渡され、見返りにあすかの兄・夏樹(丸山智己)の事件を一緒に調べてほしいと言われる。冴子が追う"神隠し"が、夏樹が殺害された頃から始まっているため、夏樹の事件に"神隠し"にたどりつくヒントが隠されているかもしれない、と言うのだ。

そんな折、幸田から電話があった、と京香から伊達に連絡が入る。幸田は、自分がやったことは決して許されないことだ、と自殺を思わせる口ぶりだったと言う。その通話記録から、幸田は三浦海岸の公衆電話からかけていたことがわかり、来栖淳之介(平山浩行)らが急行するが、現場に幸田の姿はなかった。

幸田が京香に電話をする前に、成美に電話をしていたことを知った伊達は、成美に幸田の居場所を教えてほしいと頼む。幸田を見つけ真実を聞きたいという伊達に、成美は、鑑定結果を改ざんして自責の念にかられ、自殺を思い立ったというのが真実だろう、と平然と言う。伊達は、成美が沙世の強請りを利用して椎名の鑑定結果を改ざんさせ、今度はその改ざんを理由に自殺を強いたのだ、と成美に迫る。成美は、そんなことで自殺はしないだろう、と言うが、伊達は、幸田は妻を巻き添えにすることに耐えられず、死を選ぼうとしているのだ、と答える。

その頃、あすかは、京香から幸田の居場所のヒントを聞いていた。そんななか、京香は夫がどうして脅されたくらいで死のうとしているのか理解できない、と話す。するとあすかは、迷いながら、「精神鑑定士の妻 息子を殺した過去」と書かれた原稿を差し出す。それは、冴子から渡されたもので、そこには、3歳のときに事故で亡くなった幸田夫妻の息子・伊吹に関することが書かれていた。伊吹は事故死だが、京香に落ち度があったかのように書きたてている原稿が世の中に出たら、京香が傷つくと思った幸田は、それを出版させない約束を成美とした代わりに死を選ぼうとしていたのだ。

その後、伊達の説得で、成美は幸田が三浦海岸の漁協跡にいると明かし、連絡を受けた久遠、来栖らが急行する。しかし、そこに幸田はいなかった。と、あすかから、幸田があるホテルにいることが確認されたと連絡が入る。ところが、来栖らが着いたときには、幸田は自殺を図っていて、かろうじて息はあったが、病院に搬送される前に死亡したという。

成美は、時間を稼がせるために、わざと違う場所を教えたのだ。伊達に幸田の死を告げられても、成美は表情を崩すこともなかった。

その夜、事務所にいた成美のところに、黒づくめの伊達と久遠が現れる。伊達は、幸田を自殺に追い込んだのは成美だ、と迫るが、「だったら何?」とまるで悪びれる様子もない。そして、自分は法には触れていないし、法を犯さなくても人は殺せるのだ、と言い放つ。伊達は、そんな成美に銃口を向けると「お前に明日は来ない」と言い、発砲する――。

その頃、県警本部でひとり夏樹の事件の捜査資料を見ていたあすかは、資料が1枚抜かれていることに気づく。すると突然、肩を叩かれた。そこには、井筒将明(鹿賀丈史)が立っていた。

(以上公式サイトhttp://www.fujitv.co.jp/JOKER/index.htmlより)


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宮城夏樹

宮城夏樹【みやぎなつき】 … 丸山智己公式サイト1公式サイト2公式ブログ(現)公式ブログ(旧)

宮城あすかの実兄。5年前に路上で刺殺される。容疑者の一人に井筒将明。事件は迷宮入りしたが、裏で警察の上層部が動いていたという噂もあった。
冴子と同じ日に捜査一課強行犯係4班に配属された。伊達や冴子とは旧知の仲。冴子のことが好きだったが、伊達と争って負けてからは2人の幸せを願う。
背が高くて声がデカい豪快で男気のある男。井筒の秘密に知ってしまった?


・丸山智己 … 1975年3月27日生まれ、O型、長野県出身、身長184cm


<トリビア>
・昭和50年6月11日生まれ。平成17年12月14日、横浜市中区若葉4丁目の路上で右上腹部を刺され死亡。享年30歳。同事件の報告書に記載されていた階級は警部補
・死亡時の住所は横浜市緑区青柳5丁目4番地11号グリーンマンション304号
・配属された初日から遅刻。この悪い癖は妹のあすかにもきちんと引き継がれている





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第五話:概要

放送日: 2010年8月10日
タイトル: 「CRIME5 金の亡者…女弁護士の非情」
演出: 土方政人


<ゲスト>

氷川成美: 鈴木砂羽

幸田弘道: 小須田康人

幸田京香: 春木みさよ

柿原沙世: 菅原禄弥

宮城夏樹: 丸山智己


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一話315円、全話1575円

2010年8月10日火曜日

第四話:感想

 
脚本は今回が一番良かった。
演出も余計なドタバタや効果を入れようとせず、役の心情を引き立たせることに注力していたことに好感がもてた。

このドラマは、「事件発生」(起)-「犯人特定」(承)-「立件不可」(転)-「闇の制裁」(結)という非常に明快な展開をベースとしている。
「水戸黄門」でも観るように視聴者は最初から展開がわかっているわけだ。

毎回陰惨な事件が起こり、遺族の悲しみ苦しみを目の当たりにしながら、伊達たち捜査員は犯人を特定して立件すべく全力を尽くす。
なのに立件を目の前にして何らかの理由で立件を諦めざるを得なくなる。犯人は被害に合うほうが悪いとでも言いたげに高笑い。そうして遺族や捜査員の悔しさが頂点に達したとき、闇の制裁人が犯人に無法の裁きを与えにやってくる。
視聴者は捜査員たちと同じ気持ちになって憤慨し、闇の裁きによって悪いヤツは罰を受けるんだというカタルシスを得る。それがこのドラマにおける「事件のストーリーライン」の在り方でもある。

しかし1~3話までこのカタルシスを与える展開が上手く機能していなかった。
最大の理由は「立件不可」(転)があまりにも練られていなかったせいである。

第一話の「立件不可」の理由は「容疑者の父親が検察のお偉いさんだったから」。
これについては「第一話:正義とは何か」で既に触れた。
実際のところ警察よりも検察が力を持っていることは事実だが、動物殺しがエスカレートして子供殺しにまで至った殺人鬼が、親が検察の上層部にいるという理由だけで無罪になったという展開にはあまりにも無理がある。
奇しくも、森元総理の長男で県議会議員だった祐喜氏が酒気帯び運転でコンビニに突っ込み逮捕されたばかり。現実はこんなものだ。

第二話の「立件不可」の理由は「自白が取れなかったから」。
伊達の48時間耐久取調べは面白かったがストーリー構成自体がまとまりきっておらず、テンポのいい演出と役者の演技力で上手くカバーされてはいたものの、内容はピントのぼけたものになってしまった。
この回で見せたかったものは「犯人は判っているのに証拠も自白もなくて逮捕出来ないやるせなさ」や「失火の疑いで世間から責められる遺族と被害者の関係」、「違法捜査や別件逮捕による取調べに対する伊達・久遠・あすかのスタンス」といったところだろう。
プロットが沢山浮かぶのはいいことだが、医療ミス云々のくだりはいっそカットしてしまったほうが構成にまとまりも出た。

第三話の「立件不可」の理由は「証拠がなかったから」。
山原が死亡推定時刻を操作した証拠となる断熱カーテンは既に焼却されてしまい、捜査本部の設置も却下され、井筒からこの事件は心中事件として処理すると宣言される。ただし第三話の場合、起承転結の「転」は「立件不可」よりも「久遠の暴走」に置かれており、「事件のストーリーライン」から「ジョーカーのストーリーライン」へのクロスが見られる。
第一話から積み重ねられた「繰り返しの暴力で人の心を踏みにじる人間が許せない」「そんな奴が捕まえられずにのうのうとしていることが許せない」という久遠の激しい感情のクライマックスを「転」に持ってきたことで上手くカタルシスを得られる流れに持ってこれた。
しかしこれは「第三話:感想」でも書いた通り、久遠役の錦戸と伊達役の堺の演技力による成果に他ならない。

このドラマのように起承転結の「転」に「立件不可」がくるパターンの場合、2話や3話のように「証拠も自白も取れなかった」というケースが多くなるだろう。

トラディショナルな刑事モノでは「転」に「加害者の感情の発露と自白」が来るので、加害者がなぜそんなことをしたかにさえ説得力があればストーリー構成は難しくない。
時代劇であれば「転」に「手詰まり」を持ってきても、その時代は理不尽なことがまかり通っていたという視聴者との共通認識さえあれば、手詰まり感はどうとでも演出出来る。
現代劇であっても警察組織を離れたアウトロー達の話にしたり、主人公たちが警察官であっても潔くリアリティを切って警察内の闇組織にすれば、まだいくらでも楽な持っていきようがあった。

しかし「ジョーカー」では主人公達の主たる仕事はあくまで正規の警察官としての仕事であり、冒頭でのメッセージにもあるようにフィクションでありながらリアリティを売りにしようとしている。最初から脚本のハードルを上げてしまっているのだ。
であれば「闇の仕事」(結)は現実にはありえない設定でも、それに向けた「事件発生」(起)から「立件不可」(転)に向けた流れに刑事モノとして十分なリアリティを持たせなければ、「転」の盛り上がりも「結」の説得力も成立しなくなってしまう。

「ジョーカー」ではそれを補助するファクターとして警察の権威主義や隠蔽体質、事なかれ主義を盛り込み、そこにリアリティを持たせたいようだが、これも説得力ある「事件のストーリーライン」あってこそ。
井筒役の鹿賀の演技が孤軍奮闘でこのあたりの暗部を想像させる余地を作っているが、このドラマの肝がこの警察の暗部によるものであれば、明らかに登場人物も伏線も足りない。

第四話の事件は前三話と比べると「立件不可」(転)に持って行く流れが非常にスムースだった。
その要因は「立件不可」(転)の要因が「証拠も自白も取れなかった」からではなく「心神喪失で無罪判決が確定していた」ためだ。
11人もの死傷者を出した無差別殺人事件で検察が控訴を断念し地裁レベルで無罪確定となったというところにはリアリティがないが、to be continuedである今回の場合、これも伏線の一つである可能性もあるのとりあえず置いておく。
現行法では無罪が確定してしまった以上、たとえ判決が間違っていても一事不再理効で訴追は出来ない。法律上そうなっているのだから視聴者も「転」への流れに納得しながら観ることが出来る。
こういった「証拠も自白も取れなかった」以外で視聴者が納得しやすい「転」のケースは他に、「公訴時効」「犯罪者引渡し条約のない国の犯人が自国に逃亡」「地位協定によって十分な捜査が出来なかった」などが挙げられる。

今回は演出上も心神喪失を装う犯人椎名と、それを見抜いている伊達の化かし合いが効果的に演出されていて、第二話の犯人との心理戦以上の面白さがあった。
映画「タクシードライバー」のデ・ニーロを思い起こさせる、バックミラーに映る人の心の奥まで覗き込むような伊達の視線。心神喪失でなくても狂人には違いない犯人。
to be continuedへ向かう畳み掛けるような演出も非常に効果的で、次回に向けての高揚感が十分に高まった。

このドラマでは主要キャストにいい役者を揃えているだけでなく、毎回のゲストにも玄人好みな役者をキャスティングしている。今回の犯人役の窪田正孝も、被害者の父親役の甲本雅裕も非常に上手く観ていてあっという間に時間が過ぎた。
中には第一話の小市慢太郎のように演出ミスで役者の良さや上手さが十分に伝わらなかった場合もあるが、細田よしひこ、今井悠貴、鈴木浩介、黄川田将也など、それぞれが視聴者をドラマの中に引きずり込む素晴らしい演技をしていた。

一方で少々残念だったのは杏とりょうだ。
りょうは冴子という役を確実に掴んできているが、いかんせん鹿賀丈史に負けてしまっている。冴子は井筒を追い詰めていく役なので、ぜひとも鹿賀に負けない力を発揮して欲しい。

杏はここにきて役者としてのキャリア不足が響いている。
出番の多くは、堺、錦戸、鹿賀と絡んでいるが、この3人は天性の役者だ。息をするようにその役を演じ、ほんのワンカットで場を自分のものにすることが出来る。錦戸の演技が堺や鹿賀とのシーンを重ねる毎に水を得た魚のように良くなっていくのは、彼が堺や鹿賀と似たタイプの役者だからだ。
役を作って演技をするタイプの役者でも場数と演技の巧みさがあれば、堺たちのような役者の演技を逆に自分のために活かして自分の見せ場を作ってみせるものだが、杏はすっかり呑まれてしまって、それっぽい宮城あすかを演じているだけになってしまった。
回を追うごとにドラマの中の役も成長していくが、あすかは毎回毎回同じあすかでふとした表情や台詞回しにも変化が見られない。
台本に書いてある通りに演じるという意味ではまあ合格点だが、あのキャストの中ではどうしても見劣りしてしまう。伊達の教えひとつひとつに確実に成長していくあすかを見せて欲しい。

「ジョーカーのストーリーライン」については、三上の過去と三上が伊達をどのように思っているか明らかにされた。また昔の井筒と今の井筒の変化も仄めかされている。
伊達に文句を言っているばかりの来栖も伊達を嫌っているわけではなく、刑事らしい正義感を持った人間臭い男であることが見えてきた。吠えるタイプの刑事としては堀田と被ってしまっているが、今後堀田ももっと肉付けがされていくだろう。堀田役の土屋がどんなときにも堀田を丁寧に演じていることには非常に好感が持てる。轟も3人の中では後輩でやや神経質そうなカラーが出てきた。

前回闇の制裁者の仲間になった久遠は今回もいい味を出していた。
伊達を息子のように思ってきた三上が、久遠のことも息子のように思うようになるにはまだ時間が掛かるだろうが、久遠が伊達や三上を誰にも内緒のファミリーのように慕いはじめているのはよくわかるし、闇の制裁者としての仕事にも意義を感じてハマりつつあるのもよく伝わってくる。

纏っていた鎧を解いて助けを求めた久遠を受け止めた伊達も、次第に久遠に正直な心情を見せ始めている。
ただし「こんな思いをするのは自分だけでよかった」と吐露する伊達に「俺も普通じゃないから」と答える久遠との間にはまだ認識のギャップがあるだろう。
久遠の両親についてはまだ触れられていないが、おそらく久遠の目の前で殺されていると思われる。例えその点では同じであっても、久遠は伊達が犯人を殺すつもりで刺したことを知らない。
久遠は伊達が闇の仕事をしているのは、両親を目の前で殺されたことが原因だと思っているだろう。その上で「自分も同じ境遇だから巻き込んだなんて思わなくていいよ」と言いたいのだと思う。

椎名を制裁する場面で、久遠は伊達が制裁を行うときの表情をはじめて見て、伊達の目に悲しみが宿っていることをいとも簡単に見抜いた。
これからも久遠はその観察力と頭の回転の早さで本当の伊達を明らかにしていくだろう。そして伊達も久遠の前では張り付いた笑顔の仮面を維持出来なくなっていくに違いない。

さて、最後に犯人椎名が最後に残した言葉だが、彼の持っていたコインが両面表だったことが伏線になっていると思われる。
伊達たちの仕事は、表が警察官、裏が闇の制裁者。椎名についているのは表の警察組織そのものなのかもしれない。
検察が控訴を断念して地裁レベルで無罪確定させたのも、闇の制裁者が狙ってきそうな凶悪犯を泳がすことが目的だったのかもしれない。
そのあたりは第五話で多少でも明らかになるのだろうか。

ちなみにコインに書いてあった文字はCRISTINA FERNANDEZ DE KIRCHNER」。
クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル、現アルゼンチン大統領の名前だ。
なぜ彼女の名前を使ったのかはわからないが、あまり本編には関係なさそうだ。

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2010年8月9日月曜日

第四話:伏線?セリフ集

 
三上「何考えてんだよ、こんな奴勝手に引き入れて」

久遠「だからぁ俺が伊達さんの考えに共感して…」

三上「小僧は黙ってろ!おまえのせいで5年やめてたタバコに火ぃつけちまったんだぞ」

久遠「知るかよそんな」

三上「何だその口の聞き方は!」

伊達「…似てたんですよ。昔の俺に。あなたが手を差し伸べてくれなかったら俺は路頭に迷ってた。だから放っておけなかったんです」

(久遠、素の自分に触れる伊達の言葉に、どことなく居心地悪そうに下を向く)

三上「いいか?人が増えるってことはそれだけリスクを伴うってことなんだぞ。わかってんのか?」

伊達「覚悟してます。(ストローを刺したグラスを3つ差し出す)…特製いちごミルク」

(三上、伊達の決意の固さに仕方がないなというように軽く笑い、振り向きざまに久遠の髪の毛を引っ掴んでソファに押し倒す)

久遠「ちょっ」

三上「足引っ張んなよ!小僧!」

久遠「髪引っ張んなよ!おっさん!」

三上「おっさんじゃねえ!マスターだ!」

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久遠「徹夜で出勤かぁ、つらいネ」

伊達「…誰も巻き込みたくなかった」

(久遠、不思議そうな顔で振り返り伊達を見る)

伊達「こんな思いをするのは、俺だけでよかったんだよ」

(久遠、伊達の言いたいことを一瞬考え、やがて合点が言ったようにニヤリと笑う)

久遠「だから言ったじゃん。俺も普通じゃねーって(伊達の肩をポンと叩く)」

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久遠「この女子高生、皆瀬桃子だけは3回刺されてる。この子だけは絶対仕留めたかったんだよ」

伊達「つまり顔見知りの犯行だったと?」

久遠「事件当時もおんなじ指摘を上にしたの。でも捜査本部は無差別の線を疑おうとはしなかった」

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伊達「椎名の無罪は確定してる。追っても無駄だよ」

久遠「一事不再理でしょ?一度無罪が確定したら例え新たな証拠が出てきても被告人に不利な場合判決は覆らない」

伊達「そこまでわかってるんだったら」

久遠「だから話してんだよ。もし椎名に皆瀬桃子を殺す動機が見つかったら心神喪失じゃない可能性だって出てくる。つまり…法から逃れた犯罪者だ」

(伊達、難しそうな顔で久遠を見る)

久遠「俺は確信してる。椎名高弘は心神喪失なんかじゃない。…俺達が裁くんだよ」

(薄く笑う久遠、伊達は難しい表情のまま)

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井筒「休暇ねぇ」

伊達「調べたい事件がありまして」

井筒「例の無差別殺人か。どんなに足掻いてもひっくり返らねえぞ」

伊達「真実の前に法も糞もない!…ってこれ課長の言葉でしたよね?」

井筒「ふふふ、いちいち昔の俺を引き合いに出すんじゃないよ」

伊達「それくらいあの頃の課長に憧れていたってことですよ」

井筒「今違うっていうの?」

伊達「………」

井筒「よし。3日だけだぞ。…おまえ班長だからね?」

伊達「ありがとうございます」

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<10年前>

井筒「(伊達の頭をガシッと掴んで)おまえか新入りは?係長の井筒だ。よろしくチャン」

伊達「山ノ手署から来ました!伊達一義です(頭を下げる)

井筒「知ってるよ。三上のコネとはいえたった3年で県警本部の一課だ。たいした出世だなあ」

伊達「三上さんのことをご存知なんですか?」

井筒「ああ。おまえの教育係を頼まれた。このヤマ追うぞ(伊達にファイルを渡す)」

伊達「でもこれ、既に時効が成立してますけど」

井筒「それがどうした。真実の前に法も糞もないんだよ」

伊達「(居住まいを正し)はい!」

(井筒、伊達をしっかり見つめてうなづく)

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あすか「井筒課長と同じ年齢なんですか?」

三上「ああ。彼とはよく現場で顔をあわせてねえ。誰もが憧れる存在だった」

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あすか「来栖さんたちの下に付いて良っくわかりましたよ。私がいかに伊達さんに何にも教えてもらってなかったかって」

久遠「伊達さんは背中で語るタイプだから」

あすか「ははっ、なで肩で何を語るって言うんですか」

(伊達、部屋に入ってきて)

伊達「なで肩で悪かったねえ」

(あすか驚いてお茶をむせる)

久遠「どうだった?」

伊達「皆瀬桃子の自宅、高校、通ってた予備校、行ってみたけど椎名との接点は何もなかった」

あすか「無差別殺人洗いなおしてるって本当だったんだ」

伊達「(あすかの呟きはスルーで)皆瀬桃子の携帯電話借りてきた。事件を担当してた所轄に聞いたら被害者の携帯電話まで調べてないって」

久遠「まあ無差別の線で進めてたんなら椎名の身辺しか洗わないだろうからね」

あすか「久遠さんも伊達さんに協力してるんですか?」

久遠「いや逆逆、俺が頼んだの、気になることがあって」

(伊達、あすかの疑問に対して完全スルー)

あすか「…何かわかったんですか?」

久遠「(再び皆瀬桃子の携帯に目を落とし)まあね。どっちにしたって判決は覆んないだろうけど」

伊達「あ~これこれこれ!おととしの5月13日…」

(自分そっちのけで話を続ける伊達と久遠に、あすかは不満そうに頬を膨らませる)

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(休暇中なので身分を明かさないままカラオケ店で聞き込みをする伊達。防犯カメラを見せて欲しいと頼むが断られる。そこに突然あすかが現れて)

あすか「(警察手帳を見せ)これでも駄目ですか?」

カラオケ店店長「あ…刑事さんなんですかぁ。どうぞぉ」

(あすか、伊達に向かって軽くピースサイン)

伊達「え~どうして?」

あすか「遺族が真実を知りたい気持ち、わかりますから。来栖さんたちには見回りって言ってあります」

伊達「ありがとお」

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あすか「マスターはいないんですか?神隠しに合わせたい人間」

三上「そんな人いる訳ないじゃない」

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<10年前>

井筒「おまえさあ」

伊達「はい」

井筒「シゲハルって知ってる?」

伊達「いえ知りません。誰ですか?」

井筒「シゲハルっていうのは三上の息子の名前だ。15年前、三上はそのシゲハルと奥さんを殺された。犯人はまだ捕まってない。目星は付いてるが証拠がない。だから捕まえたくても捕まえられない」

伊達「15年前…」

井筒「その事件の1ヶ月後、三上はおまえと出会った。しかもシゲハルとは同じ年。三上がおまえを息子に重ねても不思議はない」

(伊達、はじめて聞いた話に驚いた様子)

井筒「だからおまえと出会ってなかったら、三上は、犯人を殺していたかもしれない。子供を殺された親っていうのは何をするかわかんねえからな」

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来栖「(怒りをこらえた低い声で)なんで大勢を殺した人間を守らなきゃいけねえんだよ」

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あすか「皆瀬さん、馬鹿なまねはやめてください」

皆瀬「もう後には引けない」

あすか「そんなことありません。まだ間に合います」

皆瀬「何がだ?娘が殺されて、椎名が無罪になって一体何が間に合うっていうんだ!」

(皆瀬、あすかのそばにしゃがみ込む)

皆瀬「何で法律で裁けない?被害者遺族全員がそう思ってるはずだ。どうして、あいつが無罪なんだって!…だから俺がやるしかないんだ」

あすか「椎名を刺してもあなたがもっと傷つくだけなんです!」

皆瀬「うるさい!俺の気持ちなんか…」

あすか「わかります!わかるから辛いんです。私も兄を殺されました」

(皆瀬の表情が驚愕に変わる)

あすか「憎んでも何も救われなかった。だから信じることにしたんです。この先に待ってるのが絶望じゃないって。信じたいんです!」

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椎名「どうして他に10人も刺したか教えてやるよ。心神喪失を装うためさ。大勢殺したほうがイカれてると思われるからな。おかげで俺は無罪。…悔しいだろう?自白してんのに捕まえられねえんだもんなあ」

伊達「君には桃子さんとの接点も動機もある。あの殺人は計画的犯行だった。…さっきのテストは全部デタラメだよ」

(椎名の顔色が変わる)

伊達「僕は君に嘘をついた。すまなかった」

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(椎名が心神喪失でないことを知った皆瀬は包丁で椎名を刺そうとする。その腕と包丁の歯を伊達が素手で止める)

伊達「桃子さんがどうしてバイトをはじめたかご存知でしたか?」

(久遠が桃子の残したメッセージビデオを流す。そこには桃子から父親への感謝の気持ちが遺されていた)

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(被害者遺族の殺人予告から守っていた椎名を無断で連れ出したことで)

来栖「謹慎おめでとう!異動もあるかもなあ」

(伊達、まあそれも仕方ないという表情)

来栖「…まぁ…俺がおまえでも…同じことしたけどな…」

(来栖、伊達の上腕を喝を入れるように強く殴る)

伊達「いった!」

(しっかりしろよとでも言いたげに伊達を睨みつけ去っていく来栖。伊達、少々照れくさそうに微笑む)

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伊達「(携帯電話で)いま椎名が病院に戻りました」

三上「(携帯電話で)わかった。何とかする」

(あすかが歩いてくる)

伊達「手続きは?終わった?」

(あすかは答えず俯いたまま)

あすか「…どうして、被害者が加害者にならなきゃいけないんですか?どうしたら遺族を救ってあげることが出来るんですか?!」

(伊達、皆瀬の包丁で怪我をした掌をあすかの目の前にかざす)

伊達「…休暇中料理してたらざっくり切っちゃった」

(あすか不思議そうな表情)

伊達「そういうことで宜しく(車のキーをあすかに渡す)」

(あすか、去っていく伊達の背中を見ながら何かを考える)

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井筒「手短かに頼むよ。今日は結婚記念日なんだ」

冴子「どうして警察は神隠しを追わないんですか?」

井筒「失踪届の出ている人間はちゃんと探してるよ」

冴子「前にも言いましたよね。5年で17人の容疑者が行方不明になっているんです。警察だって気づいてるはずです。調査本部を設置しても不思議じゃありません」

井筒「死体でも上がらない限り本部を設置することが出来ないことぐらい、君もわかってるはずだ」

冴子「椎名高弘も神隠しにあう可能性があります」

井筒「…長くなりそうだな。お茶でも持ってこよう」

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(あすか、調書を読み上げている)

あすか「あなたは脅迫状を送りつけて伊達警部に椎名をライブハウスに連れてくるように指示しましたね」

皆瀬「…はい」

あすか「あなたは一人で椎名を待っていた」

(皆瀬、事実と違うことを言われて顔を上げる)

あすか「そして…」

皆瀬「待ってください。一人って私はあなたを…」

あすか「何の話ですか?私は今日一日家で寝てましたけど。…あなたの罪は脅迫罪のみとなります。起訴は免れませんがおそらく執行猶予がつくはずです」

皆瀬「どうして…」

あすか「(皆瀬に近づいて小声で)なで肩の上司の背中からそう教わりました」

皆瀬「…すみませんでした」

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(井筒が戻ってこないことに気づき捜査一課に走る冴子)

来栖「久しぶりに飲みに行くか」

堀田「いいっスねえ。このあいだの店、あそこにしましょう」

冴子「チッ、3バカ…」

来栖「あれ?あんた、確かルポライターの…」

冴子「か・た・ぎ・り。井筒課長は?」

来栖「今帰ったけど。用があるって」

(冴子、何かに気づく)

冴子「…椎名?」(慌てて捜査一課を飛び出す冴子)

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(深夜極秘に退院した椎名がトンネルを歩いている。背後から足音がして伊達が現れる。前方からは車が道を塞ぐように停車し運転席から久遠が現れる。ゆっくりと武器となるコンクリートを拾う椎名)

椎名「まだ何か用?」

伊達「おまえは桃子さんを含む11人の死傷者を出しておきながら、心神喪失と偽って法から逃れた」

椎名「…またか。何度も言ってるだろう。俺は無罪なんだよ。おまえらがどんなに足掻いても無駄なの。あんなに殺しても何の罪にも問われない」

(椎名、コインの表側をかざす)

椎名「言ったろ?俺は選ばれた人間なんだよ。俺を裁くことなんて出来ないの」

(伊達、椎名に銃口を向ける)

伊達「だから俺が裁く」

(椎名、怒りに燃えた目でコンクリートブロックを片手に伊達に向かっていく)

椎名「ふざけんな…ふざけんな…ふざけんな!」

伊達「おまえに明日はこない」

(伊達、引き金を引く。久遠、そんな伊達の姿を見つめたまま、椎名が倒れているところまでゆっくり歩いてくる)

久遠「…なんでそんな悲しそうに撃つの?」

(伊達、驚いて久遠を見つめ、表情を強ばらせて視線を逸らす。久遠はそれ以上は触れず倒れている椎名を運ぶため椎名の腕を取る。その瞬間、椎名が逆に久遠の手首を強く掴んだ)

椎名「俺が精神鑑定で心神喪失を装えたって本気で思ってんのか?」

(狂気の瞳で手首をきつく掴んで引き寄せようとする椎名に久遠は恐怖心を抱く。伊達は椎名の意味深な言葉に眉を顰める)

椎名「ははっ、おまえらは何にもわかってないよ、ははは…ははははっ、ぎゃははは…!」

(久遠、懸命に椎名の手を外そうとするがなかなか解けない。椎名の狂気を目の当たりにした久遠は恐怖で慌てはじめる)

久遠「離せよっ!」

(久遠、腕を思い切り引っ張って椎名の手を振りほどき、そのまま椎名の顔面を蹴り飛ばす)

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(冴子、椎名が入院していた病院に向かう)

看護婦A「椎名さん、退院なんておかしいよね」
看護婦B「しかも深夜に裏口からって…」

(看護婦の会話を聞いた冴子は病院の裏口に向かうが椎名の姿はない。そのまま外へ出て椎名の姿を探す。伊達たちが椎名を拉致したトンネルまで来て、椎名がいつも表裏占いで使っていたコインを見つける。裏返してみるとそのコインは両方が「表」だった)

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(埠頭で椎名を三上に引き渡す。三上の車が去っていくのを見送りながら)

久遠「ねえ。奴ら閉じ込めてる場所ってどこにあんの?」

伊達「さあ」

久遠「さあって」

伊達「俺の役目は法で裁けなかった人間をここに連れてくるところまでだ。そのあとどうなってるか知らないし知りたいとも思わない」

(伊達、そういって踵を返す。久遠、伊達の背を見つめた後、椎名が久遠の手首につけた指の痕を見て、椎名が乗った車の方向に目をやる)

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冴子「椎名が行方不明になりました」

皆瀬「そうらしいですね」

冴子「心当たりありませんか?警察に何か言われたとか」

(皆瀬が連行されるシーン。
久遠「椎名は俺達が始末する。一生あんたの前に現れることはない。だからあんたは娘のぶんも生きるんだ」)

皆瀬「いいえ。私は何も知りません」

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(バーmikamiの掃除をする久遠。カウンターには伊達。カウンターの中には三上)

久遠「どうやって椎名を強制退院させたの?」

三上「おまえに話すことは何もねえよ」

久遠「CIAクラスのバックがついてるとか?」

三上「馬鹿なこと言ってねえで手ぇ動かせよ!」

(三上、考え込んでいる様子の伊達に気づく)

三上「どうした?」

伊達「椎名の最後の言葉…(伊達の脳裏に椎名の言葉が蘇る)」

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2010年8月7日土曜日

第三話:伏線?セリフ集

 
久遠「なんだ生きてんじゃん。トドメ刺せよ」

(春日の胸元に刺さっているものを見て)

久遠「麻酔弾?初めから殺す気なかったってこと?…こんなヤツ生かしといてどうすんだよ?」

伊達「何をしにきた?」

久遠「こう見えても俺警官だよ?見逃す訳にはいかない。…なぁんてね。別に咎めにきたわけじゃないんだよ。…俺も一緒にやってやるよ。悪党退治。何か面白そうじゃん。のうのうと生きてる犯罪者に正義の鉄槌を!みたいなさ。こういうの一人よりも二人のほうがさ…」

(伊達の拳が久遠のみぞおちに入り久遠が倒れる)

伊達「…君は俺とは違う」

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<20年前>

伊達「別にいいですよ。様子見に来なくても」

三上「まあそう言うなよ」

伊達「俺が他の奴らと違うからでしょ。あなたのおかげで罰を受けずに済んだ。でも俺は普通じゃない!壊れてる」

三上「何度も言ってるだろ。あのヤクザは一命を取り留めた。別に殺した訳じゃない」

伊達「でも人を刺した!…もう構わないでください」


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来栖「課長、春日に捜索願が出されたそうです。…課長、神隠しってご存知ですか?」

井筒「知ってるよ。正義のヒーローだろ」

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(バーmikamiに久遠があすかを連れてやってくる。伊達は久遠と飲むはめに)

久遠「じゃあ冴子さん知ってますか?伊達さんの秘密」

冴子「秘密?」

(三上と伊達の顔色が変わる)

久遠「伊達さんね…。おしっこ漏らすんスよ」

冴子「うっそ~」

あすか「あれやっぱり漏らしてたんだ~」

久遠「(小声で)よかったネ、バレなくて。でも俺結構しつこいから」

(久遠、楽しそうな笑顔をうかべる)


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(現場に久遠が遅れてやってくる。伊達の姿を見つけて馴れ馴れしく肩に手を置く)

久遠「さ、やっちまおうか」

(伊達、少々忌ま忌まし気)


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(猪俣の押収品を前に)

久遠「アンビリーバボーなネタがもうひとつ。亡くなった内海晴香の身体には痣があった」

あすか「これも猪俣が?」

久遠「…こいつが生きてたら俺が殺してやったのに」

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(犯人は猪俣だというあすかに伊達は手品で花を出してみせる)

伊達「花なんて出るわけがないと思ったでしょう?そういう思い込みが捜査の命取りになる」

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(3バカが井筒に詰め寄って)

堀田「無理心中で片付いたヤマ、なんで洗いなおしてるんですか?」

来栖「今回に限ったことじゃありません。いつもあいつだけ単独行動して。…仮にも俺達の班長なんですよ?!」

井筒「まあまあまあ、伊達には伊達の考えがあるんだよ」

あすか「ただいま戻りました」

「伊達さんは?」

あすか「出掛けました。キャバクラに」

来栖「あんの野郎っ」

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冴子「私がここにいたときから噂ありましたよね」

井筒「警察が証拠不十分で立件出来なかった容疑者が行方不明になるっていうアレか?」

冴子「はい。これ見てください。立件出来なかった容疑者の所在を探ってみたんです。そしたら過去5年の間に少なくとも17人の容疑者が行方不明になっています。しかも私がいた頃に起きたこの2つの事件はマスコミに発表されていません」

井筒「警察の内部の人間がパクれなかった容疑者を密かに始末している、そう言いたいのか?」

冴子「可能性はあると思います」

井筒「警官がそんなことするわけないだろう」

冴子「私が調べたところ神隠しが始まったのは宮城夏樹が殺された事件の頃からなんです。あの事件は迷宮入りになりました。当時、上層部の圧力で事件をもみ消したという噂もありましたよね」

井筒「何が言いたい」

冴子「あなたはあの事件の容疑者の一人でした」

井筒「私を疑ってるのか?」

(冴子、じっと井筒を見つめる)

井筒「特大スクープ…期待してるよん」

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伊達「つづきは明日にしよう」

あすか「もしかして…」

伊達「そう、キャバクラ」

あすか「サイテー…」

久遠「伊達さん!」

(伊達、僅かに警戒しながら振り向く)

久遠(含み笑いを浮かべながら)「いってらっしゃぁい」

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久遠「あの、伊達さんの両親って殺されたんスか?」

井筒「何だよ急に」

久遠「いやちょっと調べてみたら、25年前に起きた被害者の名前が伊達さんの両親と同じだったんで」

井筒「25年か、もうそんなに前になるか。借金の保証人になったばっかりにな」

久遠「その事件が今の伊達さんを作ったってことなんすかね」

井筒「まあ警官になるきっかけのひとつにはなっただろうなあ。目の前で親を殺されたんだからな」

(井筒の言葉が久遠の中の何かに触れる)

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あすか「警察は被害者や残された遺族にとって最後の砦だと思ってました。でも現実は権力に屈したり状況証拠じゃ立件出来なかったり。目の前に犯人がいるのに捕まえられないなんてくやしいですよ」

伊達「しょうがないよ。これが現実だよ」

(伊達が廊下を曲がるとそこに久遠が立っている。しばし視線が合うが伊達はそのまま久遠の前を通りすぎて歩いていく)

久遠「山原を裁くんなら手伝うよ」

伊達「何の話かな」

久遠「とぼけないでよ。言っとくけどあんたに選択肢ないよ。こっちはいつパクったっていいんだから」

伊達「だったら捕まえればいい。悪いが君と組むつもりはない。君には無理だ」

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あすか「どうして犯罪者が野放しされなきゃいけないんですか。許せません」

冴子「その口調、兄貴そっくりだね。何があったか知らないけどさ警察のヤマなんかそんなもんだよ。事件の3割でも解決できれば上出来」

三上「さすが元警察官のセリフは重みがあるねえ」

冴子「マスターだって元刑事じゃないですか」

あすか「そうだったんですか?へえ」

冴子「まあきっと一番悔しがってるのはあいつだと思うよ」

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(夜、伊達が一人で残業しているとき携帯電話が鳴る。相手は久遠)

伊達「どうした」

久遠「そっけないなあ。いまパソコンそばにある?あったらメール開いて欲しいんだけど」

(電話が切れる。メールにあったURLを開くとライブカメラに写った久遠の姿が)

久遠「伊達さぁん!」

(手を振る久遠の背後には椅子に拘束された山原の姿が)

久遠「ほら、見えた?俺が吐かせてやろうと思って」

(伊達の顔色が変わる)

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久遠「一目でわかるよ、人の痛みがわからない下衆野郎は」

(山原、ふと何かに気づき笑い出す)

久遠「何笑ってんだよ」

山原「背中の傷。それと同じものをうちの生徒にも見たことがあるよ」

(久遠の表情が僅かに強張る)

山原「君は人の痛みがわからない下衆野郎の被害者なわけだ。実際に残ってる傷だけじゃない。君たちは心にも深い傷を負ってんだよなあ?誰にやられた?同級生か?教師か?それとも親か?」

(久遠、一瞬奥歯を噛み締める)

山原「ははっそうか!親から虐待を受けたんだなあ。君は隠してるようだけどバレバレなんだよ。コンプレックスの塊が歩いてるようなもんだ」

久遠「…うるせえ」

山原「コワイんだろ?自分が他のやつらと違うことに怯えてんだよな」

久遠「うるせえってんだろ!」

山原「(久遠の言葉に被せるように)強がんなよ!自分を傷めつけた親に仕返しも出来なかったくせに。君は弱虫なんだよ!ははは!」

(久遠立ち上がって山原を殴りだす。それを見た伊達、久遠と山原の元へ向かう)

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(久遠、山原に銃口を向ける)

伊達「久遠!やめろ!」

久遠「こんなやつ生かしとく価値ねえよ」

(久遠の背中の酷い傷痕が伊達の眼に入る)

久遠「許せねえんだよ。こういう罪を罪と思ってない人間が。こんな風に悪人を捕まえられない世の中が」

(拳銃を両手で握り直し照準を合わせる久遠を見て、山原がとうとう自供を始める)

伊達「…君のやり方は間違ってる」

久遠「わかってるよ。でもあんたには知ってもらいたかった」

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久遠「ふざけやがって!」(銃口を山原に当てる)

伊達「やめろ!撃つな!」

久遠「なんで彼女に暴力を振るった!」

山原「あの女が悪いんだ。…僕のいうことを聞かないから」

久遠「おまえに殴られても蹴られても、それでも耐えてた彼女の気持ちがわかるか?…わかるわけねえよなあ!」

(久遠が引き金を引く瞬間、伊達が体当して久遠を止める。銃弾は逸れて試験管やビーカーが割れる)

伊達「殺しちゃいけない。終わりのない苦しみを味あわせるんだ。被害者たちのように。…こいつに明日は来ない」

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(逃げようとする山原を気絶させて)

伊達「こいつに明日はこない」

久遠「…伊達さん。あんたは俺と違うって言ってたけど、俺も普通じゃねえんだよ。苦しいんだよ。自分がどうにかなっちゃいそうで」

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<20年前>

伊達「ほっといてくれよ!俺の苦しみなんて誰もわかってくれない!」

三上「いいか!もしおまえが刺してなければあのヤクザは逃げ延びて、また同じように誰かを殺してたんだ!おまえは正義のために戦っただけだ。おまえが苦しんでるなら、痛みを抱えてるなら、俺が一緒にせおってやる!」

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(通帳と印鑑を久遠に差し出して)

伊達「内海晴香のご両親に届けてくれ。それが最初の仕事だ」

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久遠「(気絶した山原を見ながら)こいつ、どうする気?」

伊達「彼らに待っているのは終身刑だ」

久遠「終身刑?」

伊達「社会に出ることはもう二度とない。ある場所に閉じ込められて一生を過ごす。法で裁けない者を裁く。もちろん決して許されることじゃない」

(埠頭につくとそこには三上の姿が)

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第二話:伏線?セリフ集

 
(伊達が落としたボタンを握りしめて)

久遠「…化けの皮剥がしてやる」

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冴子「木内を含む法の裁きを逃れた人間を誰かが消してるってことになるよね。もしそうならターゲットは野放しになった犯罪者な訳でしょ?正義のヒーローだね。そいつは」

伊達「本当にそう思ってる?」

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井筒「伊達、老人ホームの火災、事件だと思ってんのか?」

伊達「どんな些細な疑問でも徹底的に洗えっていうのは、これは課長が教えてくださったことですよ」

井筒「むふふ、そうだったか。忘れた」

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久遠「なんでそんなに認めてもらいたいの?」

あすか「私の兄が捜査一課の刑事だったんです。でも5年前に殺人事件に巻き込まれて殉職しました。被疑者がまだ捕まっていないんです。だから早く一人前になって兄の事件の捜査をまかされたいんです」

久遠「…そっか」

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あすか「やっぱり盗聴は納得出来ません」

久遠「じゃどうすんの」

あすか「羽鳥を説得して自供させます」

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(盗聴テープを盾に羽鳥に自白を迫ったものの失敗、羽鳥は自殺)

あすか「…私のせいです。私が羽鳥を死に追いやった」

伊達「そうかもしれない。我々はその存在自体が凶器でもある。覚えておくといい」

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冴子「まあ警察がパクれなくても誰かが始末してくれるか」

三上「出るかな。神隠し」

伊達「犯罪者は警察が捕まえる。それが本来あるべき姿だよ」

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(公務執行妨害による逮捕の拘束時間切れが間近に迫って)

来栖「あいつは性格悪いから取っておきは最後に出すんだよ。まあそんなもんねえかもしんねえけど」

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(拘束時間内に春日の自供を得られず)

伊達「駄目だった」

あすか「そんなことないですよ。あそこまで追い込んだんですから。勉強になりました」

伊達「僕は暴力を振るったんだ。だけど、駄目だった」

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<25年前>

伊達「僕が…あの男を刺しました。僕を逮捕してください。お願いします」

三上「俺にまかせろ。おまえは悪くない。俺がおまえを助けてやる」

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春日「証拠がない。法は俺を裁けない」

伊達「だから俺が裁く」(銃口を春日に向ける)

春日「何をしてる。そんなことをしていいのか」

伊達「おまえは多くの命を奪った。それだけじゃない残された家族の未来も奪ったんだ」

春日「俺を殺そうとしてるおまえだって同じだろう」

伊達「俺もおまえと同じ裁きを受けなかった罪人だ」

(命乞いをする春日を撃つ伊達。倒れる春日)

久遠「伊~達さん」

(ゆっくりと振り向く伊達)

久遠「やっぱあんたの仕業だったんだ」

(前回現場で伊達が落としたボタンを投げて渡し、不気味に笑う久遠。ボタンを受け取り何の動揺も見せずに久遠をじっと見つめる伊達)

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